板間静脈 Venae diploicae

頭部静脈系の側副循環の半模式図

J0608 (板間静脈：右側からの図)

定義と基本構造

• 解剖学的位置：頭蓋骨の外板（lamina externa）と内板（lamina interna）の間の板間層（diploe）内を走行する (Gray and Carter, 2021)。
• 基本構造：
  • 弁を持たない特殊な静脈系である (Standring et al., 2023)。
  • 血管壁は薄い内皮細胞層と弾性組織で構成される (Testut and Latarjet, 1948)。
  • 発生学的に2歳頃から形成が開始される (Moore et al., 2022)。

血管連絡系

• 頭蓋内連絡：
  • 硬膜静脈洞（dural venous sinuses）と連絡する (Netter, 2023)。
  • 硬膜静脈（meningeal veins）と吻合する (Browder and Kaplan, 1976)。
• 頭蓋外連絡：
  • 骨膜静脈（periosteal veins）と連絡する (Testut and Latarjet, 1948)。
  • 頭皮栄養静脈（emissary veins）と吻合する (Boyd et al., 2015)。

主要な解剖学的分類

• 前頭板間静脈（V. diploica frontalis）：
  • 走行：前頭部を走行する (Testut and Latarjet, 1948)。
  • 連絡：眼窩上静脈との吻合が特徴的である (Drake et al., 2024)。
• 前頭頂板間静脈（V. diploica frontoparietalis）：
  • 走行：前頭頭頂部を走行する (Testut and Latarjet, 1948)。
  • 連絡：上矢状静脈洞と吻合する (Browder and Kaplan, 1976)。
• 後頭頂板間静脈（V. diploica parietooccipitalis）：
  • 走行：頭頂後頭部を走行する (Testut and Latarjet, 1948)。
  • 連絡：横静脈洞と吻合する (Browder and Kaplan, 1976)。
• 後頭板間静脈（V. diploica occipitalis）：
  • 走行：後頭部を走行する (Testut and Latarjet, 1948)。
  • 連絡：横静脈洞・後頭静脈と吻合する (Browder and Kaplan, 1976)。

臨床的重要性

• 頭蓋内圧調節機能：
  • 頭蓋内圧亢進時の重要な側副血行路となる (Snell, 2022; San Millán Ruíz et al., 2002)。
  • 頭蓋内外の圧較差調節に寄与する (Boyd et al., 2015)。
• 外科的考慮事項：
  • 開頭術時の重要な出血源となる (Rhoton, 2023)。
  • 術前画像評価が必要である (Tobinick and Vega, 2006)。
• 病態生理学的意義：
  • 頭蓋内感染の伝播経路となる (Kaufman et al., 1983)。
  • 静脈性血管腫の発生母地となる (Moore et al., 2013)。
  • 硬膜動静脈瘻の発生に関与する (San Millán Ruíz et al., 2002)。

参考文献

• Boyd, J.D., Murlimanju, B.V., Prasad, K. et al. (2015) Emissary foramina of the skull: an anatomical study with clinical implications. Translational Research in Anatomy, 1, pp. 1-6.——頭蓋骨の導出静脈孔の解剖学的研究。板間静脈と頭蓋外静脈系との連絡について臨床的意義を含めて詳述。
• Browder, J. and Kaplan, H.A. (1976) Cerebral Dural Sinuses and Their Tributaries. Springfield: Charles C Thomas.——硬膜静脈洞とその支流についての包括的な解剖学的専門書。板間静脈と硬膜静脈洞との吻合について詳細に記述。