S状静脈洞 Sinus sigmoideus

硬膜静脈洞正中面を左から見た模式図

大脳の表面の静脈(浅大脳静脈)の走行

頭蓋底内面の静脈洞

J0606 (硬膜静脈洞:頭蓋底からの図)
解剖学的特徴
起始と走行
- 横静脈洞の直接の続きとして、横静脈洞溝と乳突洞溝の移行部で始まります (Gray and Standring, 2024)。
- 側頭骨乳突部の内面に刻まれたS状洞溝(sulcus sinus sigmoidei)に沿って、特徴的なS字状の走行を示しながら下内側方向に進みます (Moore et al., 2023)。
- S字状の湾曲は、前方凸の上部弯曲と後方凸の下部弯曲から構成され、この形状により頭蓋底の骨構造に適応しています。
- 走行の終端で頚静脈孔(foramen jugulare)を通過し、頭蓋外で内頚静脈(internal jugular vein)の起始部へと移行します。
組織構造
- 硬膜の外層(骨膜層)と内層(髄膜層)の二層が分離して形成された三角形の管腔構造です (Netter, 2023)。
- 内面は単層扁平上皮である内皮細胞で覆われており、血液との直接的な接触面を形成しています。
- 壁は硬膜の線維性結合組織により構成されているため硬く、周囲の圧力変化に対して内腔は常に開存した状態を保っています。
- 静脈弁を欠くため、圧力勾配により双方向性の血流が理論上可能ですが、通常は脳から頚部への一方向性血流を示します。
血管連絡
- 上錐体静脈洞(superior petrosal sinus)からの血流を受けます。
- 導出静脈(emissary veins)を介して頭蓋外の静脈系と交通しており、特に乳突導出静脈(mastoid emissary vein)が重要です。
- 小脳の下面からの静脈血、および後頭蓋窩の髄膜静脈からの血液を集めます。
- 対側のS状静脈洞とは、横静脈洞または静脈洞交会(confluence of sinuses)を介して連絡しています。
解剖学的変異
- 左右のS状静脈洞の径には非対称性が認められることが多く、通常は右側が優位です(約60-70%の症例)。