硬膜静脈洞

硬膜静脈洞は、脳の静脈系が脳から離れて頭蓋外に出るまでの経路です。以下がその主な特徴です:

主な硬膜静脈洞には以下のものがあります:

これらの静脈洞は、最終的に内頚静脈を通じて頭蓋外に血液を排出します。

日本人のからだ(後藤 昇・国府田 稔 2000)によると

脳の静脈系が脳から離れて頭蓋外に出るまでの経路は硬膜静脈洞です。硬膜静脈洞は結合組織性の2葉の硬膜の間に存在し、血管内皮が内腔を覆っています。これは他の血管系にはみられない、脳の血管系の特徴の一つです。

後藤(1971 a,1986 a,1987)及びGoto (1971)の観察に基づき、主な硬膜静脈洞を述べます。

大脳鎌と小脳テントの付着部、トルコ鞍の周囲、斜台、錐体などに存在します。大部分の静脈血は静脈洞交会へ向かい、左右の横静脈洞からS状静脈洞を経て、頚静脈孔から内頚静脈へと流れます。内頚静脈の左右差は顕著で、132例中、右の方が太いケースは67.4%、左右同等のケースは20.5%、左の方が太いケースは12.1%でした(表26)。

上矢状静脈洞は大脳鎌の頭蓋冠付着縁に沿って前後に走ります。その横断面は逆三角形です。鶏冠付近から始まり、内後頭隆起の部位で静脈洞交会を形成します。ただし、矢状縫合の前端付近から前方には上矢状静脈洞が存在しないことがあるし、静脈洞交会を形成せずに片側の横静脈洞へ移行するものもあります。静脈洞交会部分の上矢状静脈洞の流れ方には5型が存在します(表27)。右の横静脈洞へ流れるものは半数以上あり、左右の横静脈洞へ均等に流れるものは約1/3です。

下矢状静脈洞の個体差は大きく、157例の解剖体のうち、完全型は46%、欠損型は39%、不完全型は15%でした。

直静脈洞は下矢状静脈洞の延長として始まり、大脳鎌と小脳テントの移行部分を後下方に進み、静脈洞交会に達します。直静脈洞から横静脈洞への流れ方は5型に分けられ(表28)。左横静脈洞へ流れるものは約45%で、上矢状静脈洞の流れ方とはほぼ逆の関係にあります。

後頭静脈洞は小さな静脈洞で、大後頭孔近くから始まり、小脳鎌の付着縁を走り、静脈洞交会に流入します。時折、大後頭孔から内椎骨静脈叢と連絡します。104例の観察では、81.7%が存在し、直径が1-3mmのものが43%、直径が1mm以下のものが33.7%、直径が3mm以上のものが4.8%、欠損例が18.3%でした。

静脈洞交会は、内後頭隆起の部分で上矢状静脈洞、直静脈洞、後頭静脈洞が合流し、左右の横静脈洞に分かれる部分を指します。しかし、交会を形成しない例が非常に多く、127例のうちわずかな連絡を含めても18.1%しか交会を観察できませんでした。

横静脈洞は静脈洞交会近くから始まり、小脳テントの付着縁を横走し、側頭骨岩様部錐体の後外側端で下方向に曲がり、S状静脈洞となります。132例の観察では、右側が太いものは63.6%、左右同等のものは22.7%、左側が太いものは13.6%でした。単純X線写真で横洞溝の太さが確認できるため、横静脈洞の左右の差が確認できます。