顎関節静脈 Venae articulares

J0611 (顔の深部静脈:右側からの図)
解剖学的特徴
起始と流入経路
- 顎関節静脈は、下顎骨の関節突起と側頭骨の下顎窩との間に形成される顎関節(側頭下顎関節)から起始する静脈群である (Gray and Lewis, 2023)。
- これらの静脈は主に翼突静脈叢(pterygoid plexus)へと流入し、顔面深部の静脈還流系において重要な役割を果たしている (Standring et al., 2024)。
- 翼突静脈叢を経由して、最終的には上顎静脈(maxillary vein)および顔面静脈系へと連絡している (Moore et al., 2024)。
静脈網の構造
- 顎関節包(articular capsule)および滑膜(synovial membrane)の周囲には、極めて豊富な静脈網が形成されており、関節の栄養と代謝産物の除去に寄与している (Standring et al., 2024)。
- 関節円板(articular disc)の周辺部にも血管網が分布し、特に後部結合組織(posterior attachment)には密な静脈叢が存在する (Okeson, 2024)。
- 関節包の前方、後方、外側、および内側の各部位に複数の静脈枝が分布し、立体的な静脈ネットワークを形成している (Drake et al., 2023)。
周囲構造との吻合
- 顔面静脈(facial vein)および下顎後静脈(retromandibular vein)との吻合を有し、顔面深部静脈系における重要な連絡路となっている (Netter, 2023)。
- 浅側頭静脈(superficial temporal vein)の枝とも交通し、側頭部と顎関節部の静脈還流を相互に連絡させている (Sinnatamby, 2024)。
- 上行咽頭静脈(ascending pharyngeal vein)および内頸静脈系との間接的な連絡も存在する (Moore et al., 2024)。
血管走行と分布
静脈枝の分布様式
- 関節包の前方に分布する前関節静脈枝は、外側翼突筋の上頭から起始する静脈と合流し、翼突静脈叢の前方部へと注ぐ (Moore et al., 2024)。
- 関節包の後方に分布する後関節静脈枝は、後部結合組織の静脈叢から起始し、側頭下窩を経て翼突静脈叢および上顎静脈へと流入する (Drake et al., 2023)。