翼突筋静脈叢 Plexus venosus pterygoideus

頭部静脈系の側副循環の半模式図

J0611 (顔の深部静脈:右側からの図)
解剖学的特徴
位置と構造
- 翼突筋静脈叢は、側頭筋、内側翼突筋、外側翼突筋の間の深部顔面領域に位置する豊富な静脈網である (Drake et al., 2023)。
- 主に外側翼突筋の内側面および外側面に沿って広がり、上顎骨と下顎骨の間の側頭下窩内を走行している (Moore et al., 2022)。
- この静脈叢は弁を欠くため、血流の方向が可逆的であり、感染の波及や静脈血の多方向への還流が可能である (Standring, 2024)。
- 顎動脈およびその分枝に伴行する静脈網として機能し、動脈系と密接に関連している。
合流する静脈
- 眼窩下静脈(infraorbital vein):眼窩下部からの静脈血を受ける。
- 深側頭静脈(deep temporal veins):側頭筋からの静脈血を集める。
- 翼突静脈(pterygoid veins):翼突筋群からの静脈血を受ける。
- 下顎静脈(inferior alveolar vein):下顎骨および下顎歯からの静脈血を受ける。
- 顎静脈(maxillary vein):上顎部および咀嚼筋群からの静脈血を受ける。
- 中硬膜静脈(middle meningeal veins):硬膜からの静脈血を受ける。
- 蝶口蓋静脈(sphenopalatine veins):鼻腔および口蓋からの静脈血を受ける。
- これらの静脈が合流することで、翼突筋静脈叢は頭蓋内外の静脈系を広範囲に連絡する重要な静脈吻合部となっている (Standring, 2024)。
流出路
- 翼突筋静脈叢からの静脈血は、主に上顎静脈(maxillary vein)を経て顎顔面静脈(retromandibular vein)に流入する。
- また、深顔面静脈(deep facial vein)を介して顔面静脈(facial vein)へと還流する経路も存在する (Norton, 2023)。