硬膜静脈 Venae meningeae

J0607 (右半分の頭蓋の硬膜静脈洞、左側からの図)
概要と定義
硬膜静脈は、硬膜を栄養する小静脈系で、中硬膜動脈に伴行して走行します(Yasuda et al., 2023)。これらの静脈は、頭蓋内圧調節と脳循環の恒常性維持に重要な役割を果たしています。硬膜の外層と内層の間を走行し、最終的に硬膜静脈洞に注ぎます。
解剖学的特徴
主要な硬膜静脈の分類
- 中硬膜静脈(V. meningea media):最も大きく重要な硬膜静脈で、中硬膜動脈に沿って走行します。翼点付近で頭蓋内に入り、硬膜の外層と内層の間を前上方に向かって走行し、最終的に海綿静脈洞または翼突筋静脈叢に注ぎます(Tanaka and Suzuki, 2024)。通常1-3本の主幹が存在し、直径は2-4mm程度です。
- 前硬膜静脈(V. meningea anterior):前頭蓋窩を走行し、前頭骨の内板に沿って分布します。篩骨孔を通過する枝を持ち、上矢状静脈洞や前頭導出静脈に注ぎます。前頭蓋底の静脈還流に重要です。
- 後硬膜静脈(V. meningea posterior):後頭蓋窩を走行し、後頭骨の内板に分布します。横静脈洞やS状静脈洞に注ぎ、後頭蓋窩の硬膜からの静脈還流を担います。
- 副硬膜静脈(Vv. meningeae accessoriae):小さな補助的静脈で、硬膜の各部位に分布し、局所的な静脈還流を行います。
走行と分布
硬膜静脈は、硬膜の外層(骨膜層)と内層(髄膜層)の間の潜在的空間を走行します。中硬膜動脈の溝に沿って走行し、多くの小枝を硬膜実質に送ります。静脈は動脈よりも太く、より蛇行した走行を示します。
吻合と静脈還流路
硬膜静脈は以下の構造と吻合を形成します:
- 硬膜静脈洞(特に海綿静脈洞、横静脈洞、上矢状静脈洞)
- 板間静脈(diploic veins)を介して頭蓋骨内の静脈系
- 導出静脈(emissary veins)を介して頭蓋外静脈系
- 翼突筋静脈叢との直接的または間接的連絡
組織学的構造