咽頭静脈叢 Plexus venosus pharyngeus

J0609 (頚部の深部静脈:右側からの図)
解剖学的構造
位置と分布:
咽頭静脈叢は、咽頭の後外側壁に広範囲に発達する複雑な静脈網です(Gray et al., 2020)。この静脈叢は咽頭粘膜下層から筋層にかけて重層的に分布し、咽頭全体の静脈還流を担っています(Standring, 2021)。
構成と走行:
- 咽頭筋層の構造:上咽頭収縮筋、中咽頭収縮筋、下咽頭収縮筋の各層の間を緻密に走行し、各筋層からの静脈血を効率的に集めます(Drake et al., 2019)。
- 粘膜下静脈網:特に粘膜下層では高度に発達した静脈網を形成し、咽頭粘膜の豊富な血液循環を維持しています。この網状構造により、咽頭粘膜の栄養供給と老廃物の除去が効率的に行われます。
- 筋層間の静脈交通:咽頭収縮筋の各層間には豊富な静脈吻合があり、複数の還流経路を形成しています(Moore et al., 2022)。
静脈吻合と側副路:
- 翼突静脈叢との吻合:上方で翼突静脈叢と広範な吻合を形成し、頭蓋底領域との静脈交通路を構成します(Moore et al., 2022)。
- 椎骨静脈叢との交通:後方では椎骨静脈叢と連絡し、頚椎周囲の静脈系との側副路を形成します。
- 軟口蓋静脈叢との連続:上方で軟口蓋静脈叢と連続し、口腔と咽頭の静脈系を結びます。
- 顔面静脈との吻合:前外側では顔面静脈系とも交通します。
還流経路:
咽頭静脈叢から集められた静脈血は、主に咽頭静脈を経由して内頚静脈へと還流します(Gray et al., 2020)。また、複数の側副路を通じて外頚静脈系や椎骨静脈叢へも排出されるため、豊富な代償性還流経路を有しています。
臨床的意義
外科手術における重要性:
- 出血リスク:咽頭手術(扁桃摘出術、咽頭腫瘍切除術など)において、咽頭静脈叢は重要な出血源となります。特に粘膜下層の静脈網は豊富であるため、術前の詳細な画像評価と術中の慎重な止血操作が必要です(Netter, 2023)。