内側足底動脈

内側足底動脈は、屈筋支帯の深層で分岐する後脛骨動脈の2つの末梢のうちの1つであり、外側足底動脈よりも細いです。母趾外転筋の深層を通って足底に出て、この筋と短趾屈筋の間を進み、浅枝と深枝に分岐します。この動脈は、多数の筋枝、皮枝、関節枝を派生させた後、第1趾内側面まで到達します。

足底の動脈

足底にはいくつかの主要な動脈が存在します。これらには、内側足底動脈、外側足底動脈、深足底動脈が含まれます。これらの動脈は足底部に血液を供給し、さらに細かい分岐を通じて足の各部分に血液を送ります。

日本人のからだ(村上 弦 2000)によると

浅足底動脈弓(図92)は、足底腱膜の中央部または遠位部の浅側に位置します。手掌の浅掌動脈弓に比べて発達が略で、内側足底動脈浅枝と外側足底動脈浅枝の間に形成されますが、日本人では明瞭な動脈弓は少ないです。この動脈弓から通常3本の総底側指動脈が起こりますが、発達は不十分で、第3および第4総底側指動脈は時折欠損します。足背から到来して母指内転筋横頭の近位縁に出現する底側中足動脈(後述)が、総底側指動脈の欠損を補っています(Adachi, 1928 b)。

日本人では、外側足底動脈は80.7%で内側足底動脈より太く(図93)、内側足底動脈は83.4%で同名神経の外側を走ります。一方、外側足底動脈は例外なく同名神経の外側を走ります。血管と神経が交差する場合は、一般に近位部では血管の方が浅い(Adachi, 1928 b)です。(深)足底動脈弓は、第1背側骨間筋の2頭間を貫通して足背から足底に到来する足背動脈深枝(足底枝)と、足底方形筋の外側縁から深側に入る外側足底動脈深枝の間に形成されます。この動脈弓の最も細い部位を両親動脈の境界とすれば、それは長指屈筋の外側縁付近に位置するため、日本人の(深)足底動脈弓は足背動脈深枝に由来する部分が大きいと考えられます(Adachi, 1928 b)。(深)足底動脈弓は第2-4中足骨の範囲の骨間筋より浅く、母指内転筋斜頭より深く位置し、中足骨間隙の近位部で通常4本の底側中足動脈を放ち(図94)ます。底側中足動脈は上述の総底側指動脈と吻合して各指に向かいます。また、しばしば底側中足動脈は内側足底動脈浅枝あるいは深枝の外側枝と吻合します。底側中足動脈の走行は、骨間筋の底側面を通るか、骨間筋の中を通るか、あるいは中足骨に沿うか、中足骨間隙に位置するかによって分類されています(Murakami, 1971) (図95)

固有底側指動脈について説明します。母指脛側縁の固有底側指動脈は過半数で第1底側中足動脈に由来し、残りは第1背側中足動脈に由来します。母指、第2指対向縁では第1底側中足動脈由来が多く、第2、第3指対向縁および第3、第4指対向縁では、通常はそれぞれ第2または第3底側中足動脈に由来します。第4、第5指対向縁は第4底側中足動脈由来で、小指腓側縁では腓側浅底側動脈A. plantaris superficialis fibularis ないし第5底側中足動脈由来です(Adachi, 1928 b)。

足の各関節に分布する動脈枝については貴嶋(1958)が、足の腱鞘に分布する動脈枝については田中(1960)が詳しく説明しています。

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図92 浅足底動脈弓の1例(Adachi, 1928b)

図92 浅足底動脈弓の1例

足底腱膜より浅側に存在するこの動脈弓から派生する指の動脈は弱小で、指の血流は主に足背動脈から派生する底側中足動脈に依存しています。

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図93 外側足底動脈が内側足底動脈より発達する例(Adachi,1928b)

図93 外側足底動脈が内側足底動脈より発達する例