上腸間膜動脈

上腸間膜動脈は、腹腔動脈から約1~2cm下方(第1腰椎の高さ)で前方に出現し、膵臓の後ろを通り、膵臓の頭の左側を沿って十二指腸水平部の前面を下行し、小腸間膜に入ります。小腸間膜内では、左側にやや凸のカーブを描いて右腸骨窩に向かって下行し、下膵十二指腸動脈、空腸動脈、腸骨動脈、回結腸動脈、虫垂動脈、右結腸動脈、中結腸動脈に分布します。上膵十二指腸動脈、左結腸動脈と吻合します。

日本人のからだ(宮木孝昌 2000)によると

上腸間膜動脈は、腹腔動脈から約1~2cm下方(第1腰椎の高さ)で前方に出現します。この動脈は膵臓の後ろを通り、膵臓の頭の左側を沿って十二指腸水平部の前面を下行し、小腸間膜に入ります。小腸間膜内では、左側にやや凸のカーブを描いて右腸骨窩に向かって下行し、下膵十二指腸動脈、空腸動脈、腸骨動脈、回結腸動脈、虫垂動脈、右結腸動脈、中結腸動脈に分布します。上膵十二指腸動脈、左結腸動脈と吻合します。

成人378例での調査結果によると、普通の上腸間膜動脈は、316例(83.6%)に見られました(表38)。残りの62例(16.4%)では、上腸間膜動脈がその起始部で右肝動脈、腹腔動脈あるいは腹腔動脈を構成する動脈を分岐していました(図61)。右肝動脈が上腸間膜動脈から発生するものは、378例中53例(14.0%)に見られました。さらに、上腸間膜動脈から総肝動脈378例中7例(1.9%)、脾動脈1例(0.3%)、肝脾動脈1例(0.3%)も起始していました(表38)。

表38 上腸間膜動脈からおこる動脈の出現数(成人378例中)

表38 上腸間膜動脈からおこる動脈の出現数(成人378例中)

上腸間膜動脈からおこる動脈 例数(%)
右肝動脈(副肝動脈) 53(14.0)
総肝動脈(肝腸間膜動脈) 7(1.9)
脾動脈(脾腸間膜動脈) 1(0.3)
肝脾動脈(肝脾腸間膜動脈) 1(0.3)
62(16.4)

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図61 腹腔腸間膜動脈

図61 腹腔腸間膜動脈

腹腔動脈(CT)と上腸間膜動脈(SM)の共同幹である腹腔上腸間膜動脈(CM)が腹大動脈から発生する例です。CHAは総肝動脈、CMは上腸間膜動脈、CTは腹腔動脈、Duは十二指腸、Gbは胆嚢、LGAは左胃動脈、Liは肝臓、Ltは肝円索、Paは膵臓、PVは門脈、SAは脾動脈、SMは上腸間膜動脈、Spは脾臓、Stは胃を意味します。

上腸間膜動脈と下腸間膜動脈の吻合(SM-IM吻合),腸間膜間動脈(岡本ら,1987)

日本人のからだ(児玉公道 2000)によると

この吻合は3つの吻合の中で、CT-SM吻合に次ぐ出現頻度で、214体中に13例(6.1%)が見られました。岡本ら(1987)は5%と報告しており、概ね5-6%の範囲で存在すると予測されます。上腸間膜動脈側の分岐部位は、直接上腸間膜動脈から分岐するものが8例、中結腸動脈からが4例、下膵十二指腸動脈からが1例でした。

走行は十二指腸空腸曲の上縁から腸管の縁に沿って、十二指腸提筋の浅層を横切り、下腸間膜動脈から下腸間膜静脈に伴行して上行する左結腸動脈の幹と連なります。このSM-IM吻合は下腸間膜静脈に伴行するため、腸管に沿って形成される辺縁動脈の交通とは異なり、各動脈の基部を縦に繋ぐ吻合であり、一定の形を呈するため、特定の形成原則に従って出現すると考えられます。