脊髄枝(腰動脈の)Ramus spinalis arteria lumbalis

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J0585 (右腰動脈の分岐:腰椎の一部と筋、右側および少し頭側からの図)

定義と解剖学的構造

腰動脈の脊髄枝(Ramus spinalis arteria lumbalis)は、腰動脈から分岐して椎間孔を通過し、脊髄とその被膜(硬膜、くも膜、軟膜)に分布する動脈枝です(Standring, 2020)。これらは脊髄の栄養供給において重要な役割を果たす血管であり、各腰椎レベル(L1-L5)に存在します(Moore et al., 2018)。

血管解剖学

**起始と走行:**腰動脈の脊髄枝は、各腰動脈の背側枝から分岐し、椎間孔を通過して脊柱管内に進入します(Tubbs et al., 2011)。椎間孔内では、脊髄神経根と伴走しながら走行します。

**分枝パターン:**脊柱管内に入った後、脊髄枝は前枝と後枝に分かれます(Standring, 2020):

**吻合と血管網:**脊髄枝は、前脊髄動脈および後脊髄動脈と吻合し、脊髄の縦走する血管網を形成します(Gillilan, 1958)。この血管網により、脊髄は多方向からの血液供給を受けることができます。

供給領域

腰動脈の脊髄枝は以下の構造に血液を供給します(Moore et al., 2018):

臨床的意義

**脊髄虚血のリスク:**腰部大動脈の手術(特に腹部大動脈瘤修復術)において、腰動脈の結紮や閉塞により脊髄枝の血流が遮断されると、脊髄虚血や脊髄梗塞を引き起こす可能性があります(Etz et al., 2011)。これは対麻痺などの重篤な合併症につながることがあります。