下横隔動脈 Arteria phrenica inferior

J0403 (犬の横隔膜(左背面部)の動脈の分岐、頭側図)

J0586 (男性の腹部大動脈:腹面図)

J0977 (腹腔神経叢:前面からの図)
解剖学的特徴
下横隔動脈は横隔膜への主要な血液供給源であり、以下の解剖学的特徴を持ちます:
- 起始:腹大動脈から大動脈裂孔の直下、第12胸椎〜第1腰椎レベルで分岐します (Standring, 2020)。
- 走行:左右の下横隔動脈は横隔膜の下面に沿って外側に走行し、筋性部と腱中心に複数の枝を分布させます (Williams et al., 1995)。
- 終枝:肋骨部、腰部、胸骨部の各領域に終末枝を出し、上横隔動脈(内胸動脈の分枝)と吻合を形成します (Moore et al., 2018)。
- 分岐:経路中で上副腎動脈(腎上体上動脈)を分枝し、副腎上極に血液を供給します (Piao et al., 2005)。
血管起始のバリエーション
下横隔動脈は高頻度で解剖学的変異を示します:
- 約51%の症例で単独の血管として腹大動脈から直接分岐します (Gürses et al., 2015)。
- 約34%の症例では腹腔動脈との共同幹を形成します (Loukas et al., 2005)。
- その他、腎動脈や上腸間膜動脈から分岐する変異も報告されています (Basile et al., 2008)。
- 左右差として、右下横隔動脈は通常太く、左側領域にまで分布することがありますが、左下横隔動脈が右側に分布することは比較的稀です (Hirai et al., 2013)。
臨床的意義
- 肝細胞癌の副血行路:肝細胞癌では下横隔動脈が重要な副血行路となり、経カテーテル動脈塞栓術(TACE)の際に考慮すべき血管です (Kim et al., 2007; Miyayama et al., 2010)。
- 副腎腫瘍の栄養血管:副腎腫瘍、特に上極の腫瘍では下横隔動脈からの血流が重要となります (Ohta et al., 2010)。
- 腹部大動脈瘤手術:腹部大動脈瘤の手術において、下横隔動脈の解剖学的変異の把握が合併症予防に重要です (Günenç et al., 2002)。
- 横隔膜下膿瘍:横隔膜下膿瘍の血管性治療において標的となる血管です (Miyayama et al., 2010)。
発生学