肋間動脈は、胸部大動脈から発生する一連の動脈で、胸壁の裏側と脊髄に血液を供給しています。現在の学名ではintercostalesの後にposterioresを付して命名されていますが、日本名では単に肋間動脈と呼ばれています。古い学名BNAやINAではArteriae intercostalesと呼ばれていました。Posterioresを付けた理由は、内胸動脈より分枝する前肋間枝(Rami intercostales anteriores)と対比するためです。したがって、胸大動脈の枝としての肋間動脈は、第三から第十一までの9対の肋間動脈を指します。左右とも胸大動脈の背外側面から分岐しますが、大動脈が脊柱の左側にあるため、右肋間動脈は左肋間動脈よりも長く、また分岐後すぐに脊柱の前面を横切ります。左右とも交感神経幹の背側を通ってそれぞれの肋間隙に入り、すぐに背枝を分岐します。本幹は側方に走り、最初は側壁胸膜下を走りますが、肋骨の外側部分では、最内肋間筋と内肋間筋の間を走ります。各肋間隙を通る際には、同じ番号の肋間の下縁(肋骨溝)に沿って肋間静脈と肋間神経に挟まれて走りますが、この場合、前者は動脈の頭側に、後者は尾側にあります。肋骨の外1/3と前1/3の境界のあたりで、前肋間枝という内胸動脈の枝と吻合し、終わります。ただし、下位の肋間動脈の場合は、その末梢は腹壁に入り、腹横筋と内腹斜筋の間を前進して上腹壁動脈や肋下動脈と吻合します。