肘関節動脈網 Rete articulare cubiti

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J0577 (右上腕の動脈、背面からの図)

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J0580 (右前腕の動脈:背面図)

解剖学的構造

肘関節動脈網(rete articulare cubiti)は、肘関節周囲に形成される豊富な側副血行路であり、上腕動脈、橈骨動脈、尺骨動脈からの複数の枝が互いに吻合することで構成されます(Standring, 2020)。この動脈網は肘関節包の前面と後面の両方に分布しますが、特に関節の後面(肘頭周囲)でより発達しており、「肘頭動脈網(olecranon arterial rete)」とも呼ばれます(Moore et al., 2018)。

主な分布領域は上腕骨の内側上顆と外側上顆の前面および後面であり、関節包、滑膜、周囲の靭帯や筋腱への血液供給を担っています(Netter, 2018)。

構成する主要動脈

1. 上腕動脈由来の枝:

2. 尺骨動脈由来の枝:

3. 橈骨動脈由来の枝:

臨床的意義

側副血行路としての機能:

肘関節動脈網の最も重要な臨床的意義は、上腕動脈が損傷または閉塞した場合の側副血行路として機能することです(Rodriguez-Niedenfuhr et al., 2001)。この豊富な吻合網により、上腕動脈の一部が閉塞しても前腕への血流が維持される可能性があります。ただし、急性閉塞の場合は側副血行路が十分に発達していないため、前腕の虚血を来すことがあります(Moore et al., 2018)。

外科手術における注意点: