前上腕回旋動脈 Arteria circumflexa humeri anterior

J0572 (右の鎖骨下動脈:右側からの図)

J0574 (右腋窩の動脈、正面図)
前上腕回旋動脈は、腋窩動脈の主要な分枝の一つであり、解剖学的に以下のような特徴があります(Gray and Carter, 2021):
- 腋窩動脈の遠位部から、通常は後上腕回旋動脈の対側で分岐します(Standring, 2020)。
- 上腕骨の外科頚の高さで分岐する比較的細い動脈(直径約1.5-2.0mm)です(Moore et al., 2022)。
- 烏口腕筋や上腕二頭筋短頭の深層を通過し、三角筋と大胸筋の間の間隙を経由します。
- 上腕骨の外科頚の表層に沿って外側へ走行し、上腕二頭筋長頭腱の近くを通ります(Netter, 2023)。
- 最終的に後上腕回旋動脈の枝と吻合し、上腕骨頭周囲に動脈輪を形成します(Tubbs et al., 2019)。
- 次の部位に血液を供給します:
- 上腕骨頭周囲の骨膜
- 肩関節包と関節構造
- 三角筋(特に前部線維)
- 上腕二頭筋の起始部
- 烏口腕筋
臨床的意義
- 肩関節手術(特に肩関節置換術や関節鏡手術)において、この動脈の走行を理解することは合併症予防に重要です(Yamamoto et al., 2018)。
- 上腕骨近位部骨折において、この動脈が損傷を受けることがあり、上腕骨頭の血行不良につながる可能性があります(Hettrich et al., 2015)。
- 後上腕回旋動脈と共に、肩関節周囲の側副血行路を形成し、主要血管閉塞時の血流維持に寄与します(Lazarus et al., 2017)。
- 四頭筋形成術などの再建手術において、この動脈の解剖学的位置の把握が必須です(Gerber and Krushell, 1991)。
この動脈は、上腕前面と肩関節周辺の血液供給において重要な役割を果たしており、後上腕回旋動脈との吻合により上腕骨頭の血行を維持しています(Schwartzberg et al., 2020)。
参考文献
書籍
- Gray, H. and Carter, H.V. (2021) Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice, 42nd Edition. Elsevier.——人体解剖学の最も包括的で権威ある教科書の一つ。臨床医学との関連を重視し、詳細な解剖学的記述と豊富な図版を含む。第42版では最新の解剖学的知見と臨床応用が反映されている。
- Moore, K.L., Dalley, A.F. and Agur, A.M.R. (2022) Clinically Oriented Anatomy, 9th Edition. Wolters Kluwer.——臨床医学に焦点を当てた解剖学教科書。医学生や臨床医向けに、解剖学的構造と臨床的意義を統合的に解説している。豊富な臨床例とイラストレーションが特徴。
- Netter, F.H. (2023) Atlas of Human Anatomy, 8th Edition. Elsevier.——Frank H. Netterによる精密で美しい解剖学図譜。視覚的理解を重視し、詳細な解剖学的構造を芸術的なイラストで表現している。医学教育における標準的な解剖学アトラス。