肩峰動脈網(胸肩峰動脈の) Rete acromiale (Arteria thoracoacromialis)
肩峰動脈網の解剖学的特徴と臨床的意義について、最新の研究知見を踏まえて説明します。

J0557 (頚部浅層の動脈:右前方からの図)

J0572 (右の鎖骨下動脈:右側からの図)

J0576 (右上腕の動脈、手掌側からの図)
1. 解剖学的特徴
肩峰動脈網は、肩甲骨の肩峰部に位置する複雑な動脈吻合網です(Moore et al., 2018)。主な血液供給は、胸肩峰動脈の肩峰枝から得ていますが、後上腕回旋動脈、肩甲上動脈、および肩甲下動脈からの枝も吻合に参加します(Standring, 2020)。この動脈網は、肩峰下滑液包の直上に位置し、三角筋の起始部周辺に分布しています(Netter, 2018)。
2. 臨床的意義
この動脈網は、以下の点で重要な臨床的意義を有します(Drake et al., 2019):
- 側副血行路としての機能:上肢への主要な血管が閉塞した際、重要な側副血行路として機能します。これは特に血管閉塞性疾患の患者において重要です(Moore et al., 2018)。
- 手術における重要性:肩関節手術、特に肩峰形成術や腱板修復術において、慎重な配慮が必要な血管構造です。近年の研究では、この部位の血流温存が術後の回復に重要であることが示されています(Standring, 2020)。
- 外傷時の注意点:肩峰骨折や重度の肩関節脱臼において、損傷のリスクが高い部位です。血管損傷は上肢の血流障害を引き起こす可能性があります(Drake et al., 2019)。
- 血行再建の指標:上肢の血行再建手術を計画する際の、重要な解剖学的指標として役立ちます。術前の血管造影検査で特に注目される部位です(Netter, 2018)。
参考文献
- Drake, R.L., Vogl, A.W. and Mitchell, A.W.M. (2019) Gray's Anatomy for Students. 4th ed. Philadelphia: Elsevier. ― 医学生向けの解剖学教科書で、肩峰動脈網の臨床的重要性について詳細に解説しています。
- Moore, K.L., Dalley, A.F. and Agur, A.M.R. (2018) Clinically Oriented Anatomy. 8th ed. Philadelphia: Wolters Kluwer. ― 臨床応用を重視した解剖学書で、肩峰動脈網の側副血行路としての機能について記載しています。
- Netter, F.H. (2018) Atlas of Human Anatomy. 7th ed. Philadelphia: Elsevier. ― 詳細な解剖学図譜で、肩峰動脈網の位置関係と分布を視覚的に示しています。
- Standring, S. (ed.) (2020) Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice. 42nd ed. London: Elsevier. ― 解剖学の包括的参考書で、肩峰動脈網の血管構造と手術時の注意点について詳述しています。
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