脊髄枝(第二後肋間動脈の)Rami spinales arteriae intercostalis posterioris secundae
脊髄枝は後肋間動脈から分岐し、椎間孔を通って脊髄や髄膜、神経根、椎体・椎弓へ血液を供給する小動脈で、特に第二後肋間動脈の枝は上位胸椎レベルで見られる。起始は動脈の近位部からで、前枝と後枝に分かれ、前枝は前髄質動脈、後枝は後髄質動脈に連絡することがある。供給領域は脊髄、髄膜、骨組織で、個体差や変異が大きく、胸部大動脈手術や脊椎外傷時の脊髄虚血リスクに関与するため、術前画像で重要血管を特定し保護することが臨床的に重要である。
1. 概要(定義と位置づけ)
脊髄枝(spinal branch)は、後肋間動脈(arteria intercostalis posterior)から分岐して椎間孔(foramen intervertebrale)へ向かい、脊髄およびその被膜(髄膜)、神経根、椎体・椎弓など脊柱管内外の構造へ血流を供給する小動脈である(Standring, 2016)。第二後肋間動脈の脊髄枝は、概ね上位胸椎(T1–T2)レベルの椎間孔近傍でみられ、胸髄上部の血行動態(とくに分節性髄質動脈の存在)と関連する(Moore et al., 2018)。
2. 解剖学的特徴(Terminologia Anatomica に準拠)
2.1 起始・走行
- 起始:第二後肋間動脈(a. intercostalis posterior secunda)の近位部〜肋間溝走行部から分岐し、椎体外側〜肋骨頭(caput costae)付近を経て椎間孔へ向かうことが多い(Standring, 2016)。
- 椎間孔への進入:椎間孔へ入る直前〜進入直後に、神経根・硬膜(dura mater spinalis)・椎体周囲へ細枝を分けながら進む。胸椎では椎間孔周囲が狭く、近接する静脈叢(内椎骨静脈叢)とともに、微小外傷や圧排の影響を受けやすい(Standring, 2016)。
2.2 分岐パターン(前枝・後枝)
脊髄枝は椎間孔内で概ね以下に分岐する(Standring, 2016; Moore et al., 2018)。
- 前枝:前根(radix anterior)付近を伴走し、条件が整うと**前髄質動脈(a. radiculomedullaris anterior)**として脊髄表面へ到達し、**前脊髄動脈(a. spinalis anterior)**へ合流しうる。
- 後枝:後根(radix posterior)付近を伴走し、**後髄質動脈(a. radiculomedullaris posterior)**として後脊髄動脈系へ連絡しうる。
※第二後肋間動脈の脊髄枝が常に髄質動脈(radiculomedullary artery)として脊髄表面へ到達するとは限らず、**神経根動脈(radicular artery)**レベルで終わる場合もある。臨床的には「到達する分節性供給血管がどのレベルに存在するか」が、虚血リスクの評価に重要となる(Standring, 2016)。
2.3 供給領域(脊髄・髄膜・骨)
- 脊髄:上位胸髄の外側索〜灰白質への灌流は、前脊髄動脈系+分節性髄質動脈の寄与で決まる(Standring, 2016)。
- 髄膜:硬膜枝(meningeal branches)として硬膜・神経根鞘を栄養する(Standring, 2016)。
- 椎体・椎弓:椎体後面や椎弓根(pedicle)周囲へ骨枝を供給する。
3. 関連構造との位置関係(層構造・ランドマーク)
3.1 胸椎椎間孔周囲の理解(浅層→深層)
胸椎の椎間孔近傍では、外側から内側へ概ね以下の要素が重なる(Standring, 2016)。