肋頚動脈 Truncus costocervicalis

J0564 (頚深部の動脈、右方からの図)

J0572 (右の鎖骨下動脈:右側からの図)

J0584 (胸大動脈、腹側図)
肋頚動脈は鎖骨下動脈から分岐し、頚部と上胸部に血液を供給する重要な動脈で、深頚動脈と最上肋間動脈に分かれ、約20%で分枝パターンが変異する。臨床的には血管造影や側副血行路として重要で、外傷や手術時の出血リスクがあるため位置把握が必須であり、脊髄血流にも関与することから障害は稀に脊髄虚血を引き起こす可能性がある。
概要(定義)
肋頚動脈(肋頚動脈幹) truncus costocervicalis(TA: Truncus costocervicalis)は、主として鎖骨下動脈(a. subclavia)から分岐する短い動脈幹で、頚部深部と上位肋間(上胸郭後壁)へ血流を供給する。多くは深頚動脈 a. cervicalis profunda と 最上肋間動脈 a. intercostalis suprema(= 上位後肋間動脈への幹)に分岐する。(Standring, 2021)
起始・走行・分岐(層・隣接を含めて)
起始(左右差の典型)
- 右:腕頭動脈→右鎖骨下動脈の近位部(第1部)から分岐することが多い。
- 左:左鎖骨下動脈の近位部(第1部)から分岐することが多い。
(Moore et al., 2023)
走行(位置関係)
- 分岐後、肋頚動脈は**頚胸移行部(thoracic inlet)**で後上方へ向かい、**前斜角筋(m. scalenus anterior)**の後方〜内側、**中斜角筋(m. scalenus medius)**に近い深部を通りやすい。
- 近傍には腕神経叢(plexus brachialis)、交感神経幹(truncus sympathicus)、**胸膜頂(cupula pleurae)**があり、手技・外傷での損傷リスク部位となる。(Standring, 2021)
主要分岐
- 深頚動脈 a. cervicalis profunda
- 頚部後面へ走行し、深頚筋群(半棘筋・多裂筋など)や椎弓周囲へ血流を送る。
- **椎骨動脈(a. vertebralis)や後頭動脈(a. occipitalis)**系と吻合し、頚部後方の側副血行に関与する。(Moore et al., 2023)
- 最上肋間動脈 a. intercostalis suprema
- 多くは第1〜第2後肋間動脈(ときに第3)を起こし、上位肋間の後壁へ血流を供給する。
- 肋間神経・肋間静脈とともに肋骨頭近傍を走行し、上胸郭後壁の血行を担う。(Standring, 2021)
変異(臨床上重要なもの)
- 起始部位の変異:鎖骨下動脈第2部からの分岐、あるいは深頚動脈・最上肋間動脈が別々に直接分岐するなど。
- 枝の追加:**背側肩甲動脈(a. dorsalis scapulae)や下甲状腺動脈(a. thyroidea inferior)**との共通幹・近接分岐がみられることがある。
変異は画像診断や手術での同定に影響するため、個体差を前提に評価する。(Standring, 2021)