上行枝(浅頚動脈の)Ramus ascendens (Ramus superficialis arteria transversa colli)

J0572 (右の鎖骨下動脈:右側からの図)

J0575 (右肩甲骨の動脈:背面図)
浅頚動脈の上行枝は、頚部後方の血管系において重要な役割を担う血管です。その解剖学的特徴と臨床的意義を以下に詳述します(Gray and Standring, 2020)。
解剖学的特徴
- 起始:浅頚動脈(頚横動脈の浅枝)から分岐し、頚部後方を上行します(Netter, 2018)。
- 走行:僧帽筋上部の深層を走行し、第2〜4頚椎レベルまで達します(Moore et al., 2022)。
- 径:通常0.8〜1.5mm程度で、個体差があります(Tubbs et al., 2019)。
- 分布領域(Standring, 2020):
- 僧帽筋上部(頭板状筋部)
- 板状筋
- 頭半棘筋および頚半棘筋
- 頚部後方のリンパ節群
- 吻合:後頭動脈の下行枝と豊富に吻合し、頚部後方の側副血行路を形成します(Moore et al., 2022)。
バリエーション
- 約15%の症例では、浅頚動脈からではなく、後頭動脈から直接分岐することがあります(Osborn, 2017)。
- 稀に、椎骨動脈からの分枝と吻合することもあります(Tubbs et al., 2019)。
臨床的意義
- 頚部後方手術(頚椎後方アプローチなど)の際に損傷する可能性があり、出血源となることがあります(Kim et al., 2021)。
- 頚部の血管造影で明瞭に描出され、頚部腫瘍(特にリンパ節転移)の栄養血管となることがあります(Osborn, 2017)。
- 片頭痛や後頭神経痛などの頭頚部痛に関連する場合があり、神経血管圧迫の一因となる可能性があります(Choi et al., 2018)。
- 頚部の外傷性動脈損傷の際、側副血行路として重要な役割を果たします(Moore et al., 2022)。
この血管は、解剖学的には小さな分枝ですが、頚部後方の血液供給において重要な役割を担っており、特に後頭動脈系との吻合を介した側副血行路の形成に寄与しています(Standring, 2020)。また、頚部後方アプローチの手術において、その走行を理解することは術中出血を防ぐために重要です(Kim et al., 2021)。
参考文献
書籍