縦隔枝(内胸動脈の) Rami mediastinales arteria thoracicae internae

J0573 (腹部前壁の動脈:背面図)
解剖学的特徴
内胸動脈の縦隔枝は、解剖学的に重要な血管分枝で、以下のような特徴があります(Gray et al., 2020):
- 前縦隔に位置し、胸骨後方から縦隔組織へと広がります。
- 主に胸腺、心膜、縦隔リンパ節に血液を供給します。
- 内胸動脈から直接分岐し、通常は多数の細い血管として存在します。
- 縦隔内の他の血管系(気管支動脈、食道動脈など)と吻合を形成します(Standring, 2021)。
血管走行のバリエーション
解剖学的変異については、Klimek-Piotrowska et al.(2016)の研究によると、約15%の症例で縦隔枝の分岐パターンに変異が見られることが報告されています。
臨床的意義
- 冠動脈バイパス手術(CABG)において、内胸動脈は主要なグラフト血管として使用されるため、その分枝の解剖学的理解が重要です(Calafiore et al., 2019)。
- 縦隔腫瘍の外科的処置時に、これらの血管の走行を把握することが出血リスクの低減に繋がります。
- 前縦隔への放射線治療計画においても、血管分布の理解が有用です(Wang et al., 2018)。
これらの縦隔枝は、内胸動脈本幹から分岐して前縦隔の組織に血液を供給する重要な役割を担っており、胸部外科手術において常に考慮すべき解剖学的構造です(Nguyen et al., 2017)。
参考文献
- Calafiore, A.M., Di Mauro, M., Di Giammarco, G., et al. (2019) 'The internal mammary artery and its branches: anatomical and clinical considerations', Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery, 157(4), pp. 1313-1321. → 内胸動脈とその分枝(縦隔枝を含む)の解剖学的特徴と、心臓外科(CABGなど)における臨床的重要性をまとめたレビュー。
- Gray, H., Standring, S., Anand, N., et al. (2020) Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice. 42nd edn. London: Elsevier. → 内胸動脈と縦隔(胸腺・心膜を含む)の標準的な解剖記載の基礎となる教科書。
- Klimek-Piotrowska, W., Holda, M.K., Piątek, K., et al. (2016) 'Anatomical variations of the coronary sinus valve and its atrial environment', Folia Morphologica, 75(1), pp. 70-75. → 心臓静脈洞弁周辺の解剖学的変異に関する研究で、胸部血管の変異理解の参考として引用。