内胸動脈

内胸動脈は、以下の特徴を持つ重要な動脈です:

主な分枝には以下があります:

内胸動脈は高い恒常性を持ち、体幹の腹側で唯一の縦吻合の動脈として重要な役割を果たしています

J564.png

J0564 (頚深部の動脈、右方からの図)

J572.png

J0572 (右の鎖骨下動脈:右側からの図)

J573.png

J0573 (腹部前壁の動脈:背面図)

日本人のからだ(児玉公道 2000)によると

鎖骨下動脈の第1部で、甲状頚動脈の起始部とほぼ対応する位置から起始する内胸動脈は、高い恒常性を持つ動脈です。この動脈は体幹の腹側で肋間動脈の終枝を縦に連ね、腹側唯一の縦吻合の動脈と考えられます。腹部に達すると上腹壁動脈と名前が変わりますが、基本的な関係は変わらず、下腹壁動脈と交通します。走行は胸骨の外側縁の少し外側で、内肋間筋の深層で胸横筋の浅層に位置します。前胸壁後面に沿って下降する関係は一定です。ここでは、起始部の変化と分枝についてまとめました。

『分担解剖学』(平沢・岡本1982)では「椎骨動脈の起始と相対する」と記述されていますが、実際には甲状頚動脈の起始部に近いと考えられます。しかし、内胸動脈から第1肋間貫通枝が分岐する手前までは節問動脈(第7)と認識できるため、内胸動脈の起始、つまり「外側枝として出る鎖骨下動脈」の起始部は形態学的に重要な意義を持つと考えられます。統計的に見ても表20のように内胸動脈の起始はいわゆる鎖骨下動脈第1部(多くは椎骨動脈より遠位)からのものが428例中423例(98.8%)と圧倒的に多いです。ちなみに、Adachi (1928 a)は214例中204例(95.3%)においてこの例を確認しています。このうち甲状頚動脈と共同幹を形成する例が11例(2.6%)、残り5例(1.2%)は鎖骨下動脈が前斜角筋を貫いた後、つまり鎖骨下動脈第3部から分岐し前斜角筋の浅層を走行して再び胸腔内に入るものでした。これは、Adachi (1928 a)には記述されていない例です。この動脈を通常の内胸動脈と同じだとするのは無理があるので、一応内胸動脈と呼ぶが、由来は異なるものでしょう。実際、鎖骨下動脈第3部から分岐する肩甲上動脈が出現する場合、鎖骨の裏面を内側に走って胸骨骨膜や胸膜に分布する枝が存在することがあります。一方、内胸動脈から分岐する肩甲上動脈がそれほどまれではなく出現します。この両者は血流は逆であるが走行はまったく同じです。さらに鎖骨下静脈の浅層で両者が交通することもあるので、これら側枝によって内胸動脈の近位部が形成される可能性が推測されます(図45)。いずれにしても、由来の異なる動脈が、分布が同じというだけで同じ名前をつけられる危険があるため、注意が必要です。