上小脳動脈 (Arteria superior cerebelli)



脳底の動脈(大脳動脈輪を中心に)

小脳、脳幹、視床、線条体の動脈

J0567 (脳底の動脈)

J0570 (脳を取り除いた後の頭蓋内の大きな脳動脈の位置:左側からの右頭蓋の図)

J0571 (脳を取り除いた後の頭蓋内の大きな脳動脈の位置:頭蓋骨の上方からの図)
解剖学的特徴と走行
- 脳底動脈の末端部から分岐し、中脳周囲槽内を走行する重要な小脳供給動脈である (Rhoton, 2000)。
- 大脳脚外側面を回り込むように走行し、滑車神経に伴行して後方に向かう (Yasargil, 1984)。
- 走行中に、上小脳脚、四丘体槽、中脳大脳脚移行部を通過する。
分枝パターンと支配領域
- 主要な分枝として、以下の枝を出す (Matsushima et al., 2004):
- 内側枝:小脳虫部上部と小脳半球内側部を栄養する。
- 外側枝:小脳半球上面外側部を支配する。
- 中間枝:小脳半球上面中央部に分布する。
- 穿通枝を介して、以下の構造物に血液を供給する (Duvernoy, 1999):
- 小脳核群(歯状核、栓状核、球状核、室頂核)
- 上小脳脚、上髄帆
- 第4脳室脈絡叢
臨床的意義
- 閉塞により、以下の症状が出現する可能性がある (Adams et al., 2019):
- 小脳性運動失調(特に同側上部小脳半球領域)
- 眼振、構音障害、体幹失調
- 解離性動脈瘤の好発部位の一つとして知られている (Mizutani et al., 1995)。
解剖学的変異
- 起始部の変異が比較的多く、左右それぞれ1〜2本の形態をとる (Hardy et al., 1980)。
- 日本人における単一血管としての出現頻度は、右側73%、左側61%である (後藤・国府田, 2000)。
- 重複例では、それぞれの血管が特定の支配領域を持つ。
参考文献
- Adams, R.D., Victor, M., and Ropper, A.H. (2019) Adams and Victor's Principles of Neurology, 11th Edition. McGraw-Hill.——神経学の標準的教科書。上小脳動脈閉塞による臨床症候について詳述している。
- Duvernoy, H.M. (1999) Human Brain Stem Vessels. Springer-Verlag.——脳幹血管解剖の詳細な解説書。穿通枝の分布と支配領域について豊富な図版とともに記載している。
- Hardy, D.G., Peace, D.A., and Rhoton, A.L. Jr. (1980) 'The surgical anatomy of the superior cerebellar artery', Surgical Neurology, 13(4), pp. 289-298.——上小脳動脈の外科解剖学的研究。起始部の変異パターンについて詳細に報告している。