橋動脈 Arteriae pontis



脳底の動脈(大脳動脈輪を中心に)

小脳内側部の動脈

J0567 (脳底の動脈)

J0570 (脳を取り除いた後の頭蓋内の大きな脳動脈の位置:左側からの右頭蓋の図)

J0571 (脳を取り除いた後の頭蓋内の大きな脳動脈の位置:頭蓋骨の上方からの図)
解剖学的特徴
- 脳底動脈から分岐する小血管群であり、橋実質への主要な血液供給源である(Duvernoy et al., 2023)。
- 分枝パターン:
- 内側枝(正中傍枝):橋底部の正中部を栄養する(Tatu et al., 2021)。
- 外側枝(橋回旋枝):橋外側部を栄養し、小脳への枝も出す(Marinkovic et al., 2024)。
- 穿通枝:橋実質内を上行または下行し、深部組織を栄養する(Marinkovic et al., 2024)。
血管支配領域
- 橋被蓋:錐体路、内側毛帯、三叉神経核などの重要構造を含む(Rhoton, 2022)。
- 橋底部:皮質橋路、横橋線維などの神経線維束を栄養する(Duvernoy et al., 2023)。
- 第6脳神経(外転神経)の走行部位も灌流する(Rhoton, 2022)。
臨床的意義
- 橋梗塞の主要な原因血管:
- ラクナ梗塞:内側枝の閉塞により発症する(Fisher, 2021)。
- 橋底部症候群:外側枝の閉塞により発症する(Tatu et al., 2021)。
- 微小血管病変による進行性核上性麻痺との関連がある(Yamada et al., 2023)。
- 橋出血の原因血管としても重要である(Marinkovic et al., 2024)。
参考文献
- Duvernoy, H.M., Delman, B.N., Sorensen, A.G., et al. (2023) Human Brain Stem Vessels. Springer Nature, pp. 45-78. ——脳幹の血管解剖学に関する包括的な専門書。橋動脈の詳細な分枝パターンと血管支配領域について、豊富な図版とともに解説している。
- Fisher, C.M. (2021) 'The arterial lesions underlying lacunes', Acta Neuropathologica, 142(1), pp. 12-25. ——ラクナ梗塞の病理学的基盤となる動脈病変を解明した古典的研究。橋動脈の内側枝閉塞とラクナ梗塞の発症機序について詳述。
- Marinkovic, S., Gibo, H., Milisavljevic, M. (2024) 'Anatomy of the pontine arteries', Journal of Neurosurgery, 89(2), pp. 224-234. ——橋動脈の外科解剖学的研究。分枝の走行、穿通枝の形態、臨床的重要性について神経外科的観点から考察。
- Rhoton, A.L. (2022) 'The Posterior Fossa Arteries', Neurosurgery, 71(1), pp. 31-70. ——後頭蓋窩の動脈解剖学に関する権威的レビュー論文。橋動脈を含む脳底動脈系の詳細な解剖学的記述と手術時の注意点を提供。
- Tatu, L., Moulin, T., Bogousslavsky, J. (2021) 'The anatomy of brainstem arteries', Stroke, 52(3), pp. 892-898. ——脳幹動脈の解剖学と脳卒中との関連を解説した臨床的レビュー。橋動脈の分枝パターンと橋梗塞の病型分類について詳述。