前下小脳動脈 Arteria inferior anterior cerebelli



脳底の動脈(大脳動脈輪を中心に)

小脳、脳幹、視床、線条体の動脈

小脳内側部の動脈

J0567 (脳底の動脈)

J0570 (脳を取り除いた後の頭蓋内の大きな脳動脈の位置:左側からの右頭蓋の図)

J0571 (脳を取り除いた後の頭蓋内の大きな脳動脈の位置:頭蓋骨の上方からの図)
解剖学的特徴
- 脳底動脈の尾側1/3から分岐する細い血管で、通常は両側性に存在する (Rhoton, 2000; Matsushima et al., 2010)。
- 橋被蓋の尾側部を走行し、内耳道付近で迷路動脈を分枝する (Rhoton, 2000)。
- 外転神経の腹側を通過し、小脳橋角部を経由して小脳下面に至る (Matsushima et al., 2010)。
- 約15%の症例で欠損しており、その場合は後下小脳動脈が代償性に発達する (Yasargil, 1984)。
血液供給領域
- 小脳:虫部錐体、虫部隆起、片葉、小脳半球下面外側部 (Duvernoy, 1999)。
- 脳幹:橋外側部、中小脳脚の一部 (Duvernoy, 1999)。
- 深部核:歯状核とその周囲白質 (Duvernoy, 1999)。
- その他:第四脳室脈絡叢、内耳(迷路動脈を介して) (Duvernoy, 1999)。
臨床的意義
- 前下小脳動脈症候群:めまい、難聴、顔面神経麻痺、同側の運動失調などを呈する (Kim et al., 2012)。
- 内耳道近傍の聴神経腫瘍の手術において、重要な指標となる (Rhoton, 2000)。
- 脳底動脈からの分岐部に動脈瘤を形成することがある (Yasargil, 1984)。
- 上小脳動脈、後下小脳動脈との吻合があり、側副血行路として機能する (Tatu et al., 2016)。
血管解剖の変異
- 単独分岐、重複分岐、多発分岐など、走行パターンに個人差が大きい (Matsushima et al., 2010; Tatu et al., 2016)。
- 迷路動脈の分岐形態にも多様性がある (Rhoton, 2000)。