後脊髄動脈は、脊髄の後面を走行する重要な血管です。以下にその特徴をまとめます:
後脊髄動脈が小さいか存在しない場合、その領域には後下小脳動脈が多く分布することがあります。
J0570 (脳を取り除いた後の頭蓋内の大きな脳動脈の位置:左側からの右頭蓋の図)
J0571 (脳を取り除いた後の頭蓋内の大きな脳動脈の位置:頭蓋骨の上方からの図)
日本人のからだ(後藤 昇・国府田 稔 2000)によると
(1)脊髄枝(図62)
脊髄は成人で40〜45 cmの長さを持ち、多数の体節性血管が分布しています。体節性の動脈には31対、計62本の脊髄枝があります。大動脈弓の流域では椎骨動脈、上行頚動脈、最上肋間動脈から、胸大動脈の流域では肋間動脈、肋下動脈から背枝を通じて、腹大動脈の流域では腰動脈から、内腸骨動脈の流域では腸腰動脈から腰枝を通じて、外側仙骨動脈からそれぞれ脊髄枝を分岐しています。
これらの脊髄枝は脊髄硬膜を貫くと、前根動脈と後根動脈に分かれます。根動脈の約2/3は前根、後根、脊髄神経節に分布して終わりますが、残りの約1/3は脊髄の表面に達します。特に太いものを大前根動脈(Adamkiewiczの動脈)、大後根動脈と呼びます。
後藤・白石(1988)は、この概念が漠然としており、特に血管径が検討されていなかったため、臨床的にも重要な問題と考え、解剖体100体で調査しました。大前根動脈は100例中97例で1本あり、2例には見られませんでした。1例には2本の大前根動脈がありました。左右の差を調べると、95例中73例は左に大前根動脈があり、22例は右にありました。
大前根動脈の髄節の高さは93例中、Th9に28例、Th10に23例、Th12に11例、Th8に11例、Th11に6例、L1に5例で、84例がTh9〜L1の間にありました。大前根動脈は最も頻度が高いレベルがTh9で、これは欧州人のデータのTh10よりも1髄節高いです。このことは日本人に共通していると考えられます(宮地、1932;萬年、1967;後藤・白石, 1988)。大前根動脈の血管径は外径で0.51〜1.37mm(平均0.93 mm)でした(後藤・白石, 1988)。