内側後頭動脈 Arteria occipitalis medialis
解剖学的特徴
- 後大脳動脈のP4区分として定義され、後頭葉内側面の主要血管である (Rhoton, 2018)。
- 脳梁膨大部内側領域を走行し、後頭葉深部への血液供給を担当する (Yasargil, 2020)。
- 視床枕と鳥距溝周囲の皮質領域への重要な血液供給を行う (Tanriover et al., 2016)。
主要分枝と走行
- 頭頂後頭枝:楔前部と楔部の境界領域を栄養する (Ono et al., 2019)。
- 鳥距動脈(鳥距枝):一次視覚野(ブロードマン17野)への主要な血液供給を担う。
- 背側脳梁枝:脳梁膨大部周囲の白質領域を栄養する。
- 頭頂枝:楔前部後方部の血液供給を行う。
- 後頭側頭枝:後頭葉外側面下部への血液供給を担当する。
臨床的意義
- 鳥距枝の閉塞により、対側視野の同名性半盲が生じる(一次視覚野の虚血による)(Brust, 2023)。
- 完全閉塞でも、中心視野(黄斑視野)は通常保たれる。これは中大脳動脈からの側副血行路による保護効果のためである (Caplan, 2021)。
- 視放線や視覚連合野の損傷により、複雑な視覚認知障害を引き起こす可能性がある。
- 血管攣縮による一過性の視覚症状は、片頭痛性前兆の原因となることがある。
画像診断における特徴
- 脳血管造影では、後大脳動脈の終末枝として同定される (Osborn, 2022)。
- MRAでは、後頭葉内側面に沿って走行する特徴的なパターンを示す。
参考文献