大脳動脈輪 Circulus arteriosus cerebri

脳底の動脈(大脳動脈輪を中心に)
大脳動脈輪(ウィリスの動脈輪)は、脳底部のクモ膜下腔にある六角形の動脈吻合構造で、内頚動脈系と椎骨動脈系を連結し、脳血流の側副路として重要な役割を果たす。前大脳動脈、前交通動脈、中大脳動脈、後大脳動脈、後交通動脈から構成され、穿通枝を通じて視床や基底核など深部構造へ血液供給する。胎児期は後交通動脈が優位で、成人になると椎骨脳底動脈系が発達する。解剖学的変異は多様で、動脈瘤や脳虚血性疾患のリスクに影響し、外科手術や画像診断での評価が臨床的に重要である。
1. 解剖(位置・構成・層・隣接)
1) 位置と被覆(クモ膜下腔のどこか)
- 大脳動脈輪(circulus arteriosus cerebri / Circle of Willis)は、鞍上部〜脚間槽(interpeduncular cistern)を中心とする脳底部クモ膜下腔に位置し、視交叉〜視床下部の下面を取り囲むように走行する(Standring, 2021)。
- 近傍の重要ランドマークは、視交叉(optic chiasm)、下垂体柄(infundibulum)、乳頭体(mammillary body)、脚間窩(interpeduncular fossa)であり、動脈輪はこれらの腹側で血管網を形成する(Standring, 2021)。
2) 構成要素(TAに基づく名称)
動脈輪は、教科書的には以下の連結で理解すると整理しやすい(Standring, 2021; Osborn, 2018)。
- 内頚動脈系(carotid system)
- 前大脳動脈 A1(a. cerebri anterior)左右
- 前交通動脈(a. communicans anterior)
- 後交通動脈(a. communicans posterior)左右
- ※ 中大脳動脈 M1(a. cerebri media)は内頚動脈終末枝だが、厳密には動脈輪そのものの“輪”の一部ではなく、側方へ出る主幹として扱われることが多い(Standring, 2021)。
- 椎骨脳底動脈系(vertebrobasilar system)
- 後大脳動脈 P1(a. cerebri posterior)左右
- (近位側の供給源として)脳底動脈(a. basilaris)
3) 区分:前半(anterior circulation)と後半(posterior circulation)
- 前半(前方連結):左右A1 + 前交通動脈
- 後半(後方連結):左右P1 + 左右後交通動脈
- したがって、臨床的には**「A1–ACom」「P1–PCom」**をセットで把握すると、閉塞・動脈瘤・側副路評価が迅速になる(Osborn, 2018)。
4) 代表的穿通枝(deep perforators)の概念
動脈輪・近傍主幹からは、視床・視床下部・基底核・内包などへ向かう穿通枝が分岐し、虚血により“ラクナ様”症候を作りうる(Standring, 2021; Osborn, 2018)。
- 前交通動脈〜A1近傍:視床下部・視交叉周辺への穿通枝(chiasmal / hypothalamic perforators)
- P1近傍:視床穿通枝(thalamoperforating arteries)