後交通動脈の視床下部枝 Ramus hypothalamicus arteria communicantis posterioris
解剖学的特徴
- 後交通動脈の視床下部枝は、後交通動脈の前内側面から分岐する小血管である (Marinković et al., 2014)。
- 直径は約0.2〜0.5mmで、通常1〜3本存在する (Rhoton, 2002)。
- 後交通動脈は内頚動脈後交通部と後大脳動脈P1部を連結する、ウィリス動脈輪の重要な構成要素である (Osborn, 1999)。
- 視床下部枝は視索の外側、視床下部の前下部および下側部に分布する (Tatu et al., 2012)。
血管支配領域
- 主に視床下部の視上核、室傍核、視交叉上核などの神経核を栄養する (Duvernoy, 1999)。
- 視床下部の下部領域(漏斗部、結節部)にも分布する (Salamon and Huang, 1976)。
- 一部は第三脳室前部の脈絡叢に到達することもある (Fujii et al., 2011)。
臨床的意義
- この血管の閉塞は視床下部性内分泌障害を引き起こす可能性がある (Saeki et al., 2010)。
- 動脈瘤形成は稀だが、破裂した場合は視床下部機能不全を引き起こすことがある (Yasargil, 1984)。
- 脳外科手術、特に脳底部腫瘍や下垂体腫瘍の摘出時に損傷のリスクがある (Sato et al., 2009)。
- 後交通動脈の胎児型変異(後大脳動脈が内頚動脈から直接分岐)では、視床下部枝の走行や分布にも変異が見られることがある (Tian et al., 2016)。
解剖学的変異
- 個体によっては、視床下部枝が後大脳動脈P1部から直接分岐することもある (Pedroza et al., 2018)。
- 稀に、後交通動脈自体が欠損していることがあり、その場合は視床下部枝の起始も異なる (Bisaria, 1985)。
発生学的側面
- 胎生期の発達過程では、視床下部枝の形成は内頚動脈系と椎骨脳底動脈系の発達と密接に関連している (Menshawi et al., 2015)。