前頭頂動脈 Arteriae parietales anterior

中大脳動脈の皮質枝
前頭頂動脈は中大脳動脈の島枝から分岐し、前頭頂葉の前部(一次運動野や体性感覚野の一部)へ血液を供給する重要な末梢枝である。閉塞すると対側肢の運動麻痺や感覚障害、失行症などの症状が出現し、脳梗塞や血管攣縮に伴う一過性神経症状の原因となる。
概要(走行と灌流域)
前頭頂動脈(anterior parietal artery)は、中大脳動脈(middle cerebral artery: MCA)の上幹(superior trunk)から分岐する皮質枝の一つとして扱われることが多く、中心溝(central sulcus)周辺の前中心回〜中心溝前方寄りの頭頂葉外側面を中心に灌流する(Rhoton, 2002;Gray, 2020)。臨床的には、いわゆる**rolandic region(中心溝周囲領域)**の皮質灌流を担う枝群の一部として理解すると、症候と画像所見の対応が取りやすい(Moore, 2023)。
起始・分岐パターン(MCA皮質枝として)
- 起始:MCAの島部(insular segment)〜弁蓋部(opercular segment)で皮質枝が分かれ、シルビウス裂(lateral sulcus)を離れて皮質表面へ向かう(Rhoton, 2002)。
- 分岐の変異:MCA皮質枝は個体差が大きく、前頭頂動脈が独立枝として明瞭に同定できる場合もあれば、前中心溝動脈・中心溝動脈・後頭頂動脈などと共通幹を作る場合もある(Gray, 2020)。
走行と地形解剖(外側面のランドマーク)
- 主要ランドマーク:前中心溝(precentral sulcus)、中心溝(central sulcus)、後中心溝(postcentral sulcus)周辺。前頭頂動脈はこれらの溝近傍を皮質表面で走行し、表在静脈(上矢状洞へ注ぐ架橋静脈や皮質静脈)と近接する(Rhoton, 2002)。
- 皮質内での関係:一次運動野(primary motor cortex: M1;前中心回)と一次体性感覚野(primary somatosensory cortex: S1;後中心回)の境界である中心溝周辺の血流は、MCAの複数枝で“モザイク状”に担保されるため、単一枝閉塞でも症状が部分的になりうる(Gray, 2020)。
機能局在(症候学の要点)
前頭頂動脈の灌流が障害されると、中心溝周囲の皮質機能障害として以下が問題になりやすい(Moore, 2023;Adams & Victor, 2019)。
- 対側上肢優位の運動麻痺(M1の上肢領域を含む場合)
- 対側の触覚・位置覚障害(S1を含む場合)
- 皮質性感覚障害(二点識別・立体認知の低下など)
- 失行(apraxia):特に優位半球頭頂葉外側面が関与する場合に、道具使用や系列動作の障害として出現しうる
臨床統合:診察 → 画像 → 介入
1) 診察(視診・触診・神経学的診察)