中心後溝動脈 Arteria sulci postcentralis

中大脳動脈の皮質枝
中心後溝動脈は中大脳動脈の皮質枝で、中心後溝に沿って走行し、一次体性感覚野(ブロードマン3、1、2野)を含む頭頂葉上部に血液を供給する。閉塞や血管攣縮により対側の体性感覚障害や感覚低下が生じ、脳梗塞時には顔面・上肢・下肢の感覚障害が局在的に現れることがある。
解剖学的概要(Terminologia Anatomica 準拠)
中心後溝動脈(arteria sulci postcentralis / artery of the postcentral sulcus)は、中大脳動脈(MCA, arteria cerebri media)の皮質枝の一つとして、中心後溝(postcentral sulcus)周囲を走行し、主として頭頂葉の一次体性感覚野(S1;Brodmann 3,1,2 野)領域の皮質・皮質下白質の灌流に関与する(Standring, 2021;Moore et al., 2022)。
起始・走行・分布(皮質枝としての実務的イメージ)
起始
- 多くは**MCA の上行枝(superior division)**から分岐する皮質枝群に含まれ、Sylvian fissure(外側溝)近傍から頭頂葉凸面へ向かう(Standring, 2021)。
- 個々の皮質枝の命名・本数は変異が大きく、「中心後溝動脈」は中心後回・中心後溝周囲を優位に灌流する枝として扱うのが実用的である(Rhoton, 2002)。
走行(表在)
- 外側溝周囲から頭頂葉凸面に出て、中心後溝に概ね沿って上方(背側)へ走る。
- 皮質表面では、前方の中心溝(central sulcus)・中心前回(precentral gyrus)へ向かう枝(中心溝動脈など)と、後方の頭頂間溝(intraparietal sulcus)周囲の枝(頭頂間溝動脈など)との間で吻合ネットワークを形成する(Rhoton, 2002)。
分布(機能局在と結びつける)
- 主な灌流領域は、中心後回(postcentral gyrus)および中心後溝周囲の皮質で、**S1 の体部位局在(ホムンクルス)**に対応して、上方ほど下肢・体幹、外側ほど顔面・上肢の感覚野に関係する(Standring, 2021;Moore et al., 2022)。
- 境界領域では、前大脳動脈(ACA)皮質枝(例:傍中心小葉周囲)との皮質レベルの吻合により、虚血の分布が「教科書的な境界線」より揺れることがある(Standring, 2021)。
重要な吻合・側副血行(虚血パターンの理解)
- MCA 皮質枝同士の吻合に加えて、**ACA–MCA の皮質吻合(leptomeningeal anastomosis)**が側副血行として重要で、MCA 近位閉塞時の予後・梗塞範囲に影響する(Standring, 2021)。
- 逆に、末梢枝レベルの閉塞では側副が効きにくく、**中心後回に限局した小梗塞(cortical branch infarct)**として発症しうる(Caplan, 2016)。
臨床統合