角回枝(中大脳動脈の) Ramus gyri angularis arteria cerebri medii

中大脳動脈皮質枝.png

中大脳動脈の皮質枝

中大脳動脈の角回枝は、外側裂末端から分岐し上側頭回上部を経て角回へ至り、角回や後頭葉外側面の血液供給を担う重要な皮質枝である。閉塞すると失読や視覚性失名辞など言語障害を引き起こし、脳梗塞の好発部位でもある。

解剖学(皮質枝としての位置づけ・走行・灌流域)

角回枝(Ramus gyri angularis arteriae cerebri mediae)は、中大脳動脈(middle cerebral artery; MCA)の皮質枝(cortical branch)の一つで、外側裂(Sylvian fissure)の末端部付近、すなわち島皮質(insula)を覆う弁蓋部(operculum)を越えて大脳半球外側面へ回り込んだのちに分岐し、**角回(angular gyrus;下頭頂小葉の後部)**へ向かう枝として理解される(Standring, 2021)。

MCA の皮質枝は、外側裂を走る M2(島部)〜M3(弁蓋部)セグメントから外側面へ出たのち、後方へ向かう枝として上側頭回(superior temporal gyrus)上部を横切り、下頭頂小葉(inferior parietal lobule)の角回に到達する。角回は視覚・聴覚・体性感覚情報の統合や言語処理に深く関与するため、この領域の灌流を担う角回枝の障害は高次脳機能障害として現れやすい(Standring, 2021; Blumenfeld, 2021)。

灌流域としては、典型的には

などが含まれ、MCA 後方皮質枝群(後側頭・頭頂側)の機能的“ハブ”領域をカバーする(Moore et al., 2023; Blumenfeld, 2021)。

変異・側副血行(臨床的に重要な理由)

角回周辺の皮質灌流は、MCA 皮質枝間の吻合に加え、後大脳動脈(posterior cerebral artery; PCA)の皮質枝や前大脳動脈(anterior cerebral artery; ACA)の末梢枝との**皮質表在吻合(leptomeningeal anastomosis)**により側副血行が成立し得る。したがって同じ「角回枝領域梗塞」でも、側副血行の程度により症状や画像所見の広がりが大きく変わる(Blumenfeld, 2021)。

また、MCA 皮質枝の分岐パターンには個体差が大きく、角回枝が独立した一本として明瞭に区別できない場合や、近接する後側頭枝・頭頂枝と共通幹を形成する場合がある。血管内治療や外科的アプローチでは、“名前の付いた枝”よりも、術中・術前画像で同定できる実在の灌流枝として把握することが重要である(Standring, 2021)。

臨床統合(症候 → 画像 → 介入)

1) 典型症候(角回=言語・読み書き・認知統合)

角回を含む優位半球(多くは左)の梗塞では、以下のような高次脳機能障害が出現しやすい: