頭頂後頭枝(脳梁周囲動脈の)Rami parietooccipitalis arteria pericallosa

大脳半球内側面の動脈
頭頂後頭枝(脳梁周囲動脈)は前大脳動脈A4部から分岐し、頭頂葉内側面の楔前部や上外側部、場合によっては後頭葉内側面に血液供給する主要な皮質枝である。閉塞すると体性感覚統合障害、視空間認知障害、半側空間無視などを引き起こし、心原性塞栓症に伴う脳梗塞の好発部位となる。画像診断はMRAやCTAで可能で、治療時には側副血行路の評価が重要である。
位置づけ(起始・走行・分布)
- 頭頂後頭枝(parieto-occipital branch)は、通常 前大脳動脈(ACA) の遠位部、とくに 脳梁周囲動脈(pericallosal artery) の皮質枝として、頭頂後頭溝(parieto-occipital sulcus) 近傍へ向かう枝を指す。多くの記載では、ACAの遠位部(A4–A5)から出る 頭頂後頭枝 と 楔前枝/帯状回枝 などの皮質枝群として整理される。(Standring, 2021)
- 走行は大脳半球内側面で、脳梁周囲動脈が脳梁の上を後方へ回り込む過程で、帯状溝周囲→楔前部(precuneus)→頭頂後頭溝周囲へ向かう皮質枝として分岐し、内側面の皮質(とくに頭頂葉内側面)に達する。(Standring, 2021)
- 分布(灌流域)は個体差があるが、典型的には 楔前部(precuneus)、頭頂葉内側面(上頭頂小葉内側部)、さらに症例によっては 後頭葉内側面(楔部:cuneus) の一部まで及ぶことがある。後大脳動脈(PCA)領域と境界を作り、ACA–PCA の watershed(分水嶺)に関与し得る。(Standring, 2021)
解剖学的隣接・皮質ランドマーク
- 頭頂後頭溝は内側面で、楔前部と**楔部(cuneus)**の境界をなす重要ランドマークである。頭頂後頭枝はこの溝の近傍に到達し、溝の前方(頭頂側)・周囲の皮質に枝を配る。(Standring, 2021)
- 脳梁周囲動脈は脳梁の上面に沿って走行し、周囲の皮質枝(帯状回枝、楔前枝、頭頂後頭枝など)を出す。したがって、遠位ACA系の梗塞・血管攣縮では、帯状回〜楔前部〜頭頂後頭溝周囲の連続した内側面症候が出現し得る。(Standring, 2021)
変異(variation)と血管撮影上の注意点
- 皮質枝の命名は文献により揺れがあり、同等の枝を「頭頂後頭枝」「楔前枝」「後頭頭頂枝」等として扱う場合がある。臨床では「内側面でどの皮質領域を灌流しているか」を重視し、枝名の同定よりも 灌流域の推定を優先すると誤解が少ない。(Standring, 2021)
- 遠位ACAの形態自体も多様で、片側優位の発達、A1低形成、前交通動脈を介したcross-flowの強さなどが、遠位枝の描出に影響する。MRA/CTAでは、A1–A2の左右差や前交通動脈の形態も合わせて確認する。(Standring, 2021)
臨床統合(診察 → 画像 → 介入)
1) 症候学(障害像のまとめ)
- 楔前部(precuneus)〜上頭頂小葉内側部は、視空間・身体図式・体性感覚統合に関わるネットワークの一部であり、頭頂後頭枝領域の虚血では、視空間認知障害、半側空間無視(とくに右半球優位)、構成障害、失行など高次脳機能障害が前景に出ることがある。(Gazzaniga et al., 2019)
- さらに、ACA遠位枝の梗塞として、帯状回〜補足運動野(SMA)に近接する領域が巻き込まれると、自発性低下(abulia)、動作開始困難、把握反射などの前頭葉内側面徴候が併発し得る。(Gazzaniga et al., 2019)
2) 画像診断(US/MRI/CT/X線のうち、実臨床での要点)
- MRI(DWI):急性期は、内側面の皮質・皮質下に 楔前部〜頭頂後頭溝周囲の限局高信号として現れ得る。分水嶺(ACA–PCA)では、皮質の帯状・境界性の病変分布となることがある。(Gazzaniga et al., 2019)