中心傍小葉枝(脳梁縁動脈の)Rami paracentrales

大脳半球内側面の動脈
中心傍小葉枝は前大脳動脈A2部から分岐し、帯状溝内側面を上行して中心前回・後回の内側面と傍中心小葉深部白質へ血液を供給する重要な血管である。その閉塞は対側下肢の運動・感覚麻痺や補足運動野症候群を引き起こす可能性があり、外科手術時は個人差のある分枝パターンと走行に注意が必要である。
解剖学(Terminologia Anatomica / TA 準拠の用語を意識)
1) 起始・走行・分布(血管解剖)
- 起始:中心傍小葉枝(rami paracentrales)は、一般に**前大脳動脈(arteria cerebri anterior; ACA)A2部(脳梁上部=脳梁周囲動脈 arteria pericallosa)から分岐する皮質枝として扱われる。分岐点は脳梁膝〜脳梁体(genu/corpus callosi)**近傍のことが多いが、個体差が大きい(Rhoton, 2020)。
- 走行:脳梁周囲動脈の外側〜上方で、帯状溝(sulcus cinguli)周辺のくも膜下腔を走り、内側面の皮質枝として上行する。途中で短い穿通枝を出して皮質下白質へも灌流を与える(Rhoton, 2020)。
- 主要灌流領域:
- 傍中心小葉(lobulus paracentralis):中心前回・中心後回の内側面(一次運動野/一次体性感覚野の下肢領域を含む)
- 補足運動野(supplementary motor area; SMA)近傍(上前頭回内側面の一部)
- 周辺の**帯状回(gyrus cinguli)**の一部を含むことがある(Rhoton, 2020)。
2) 近接関係(ランドマーク)
- 硬膜・大脳鎌:内側面の表在枝は大脳鎌(falx cerebri)近傍を走るため、大脳鎌沿いの手術操作(傍矢状洞部、内側前頭部)で損傷リスクがある(Rhoton, 2020)。
- 静脈系:傍矢状洞部の架橋静脈や上矢状静脈洞(superior sagittal sinus)に近接することがあり、静脈損傷→静脈性梗塞の評価と合わせて動脈枝の温存が重要となる(Rhoton, 2020)。
3) 変異(臨床に直結する分岐パターン)
- 皮質枝の優位性:同じ「傍中心小葉」領域でも、供給が中心傍小葉枝優位か、脳梁縁動脈(callosomarginal artery)や他のACA皮質枝優位かで梗塞パターンが変わりうる(Rhoton, 2020)。
- ACAの解剖学的バリエーション(A1欠損/低形成、前交通動脈の発達差など)は、片側閉塞時の側副血行(collateral flow)に影響し、症候の重症度を左右する(Moore et al., 2018)。
臨床統合(診察→画像→介入)
1) 症候(何が起こるとどう見えるか)
- 閉塞/低灌流:中心傍小葉枝が障害されると、典型的に対側下肢優位の運動麻痺(monoparesis/hemiparesis)と下肢優位の感覚障害が出現しうる(Adams et al., 2019)。
- SMA症候群:上前頭回内側面(SMA)近傍の虚血/術後浮腫では、自発運動低下、運動開始困難、把握反射様の現象などが一過性にみられることがあり、皮質枝の温存と術後の神経学的評価が重要となる(Rhoton, 2020)。
2) 鑑別(似る病態)