前大脳動脈 Arteria cerebri anterior
前大脳動脈は、脳の主要な灌流動脈の一つであり、大脳半球内側面の血液供給を担っています(Rhoton, 2002)。以下に、その詳細な解剖学的特徴と臨床的意義について説明します。

内面から見たクモ膜下槽と関係のある血管

内頚動脈、椎骨動脈の起始と走行

右の内頚動脈(前方から見た図)



脳底の動脈(大脳動脈輪を中心に)

小脳、脳幹、視床、線条体の動脈

J0567 (脳底の動脈)

J0568 (右側の中大脳動脈と脈絡膜動脈、尾側図)

J0569 (右大脳半球の内側面の動脈)

J0570 (脳を取り除いた後の頭蓋内の大きな脳動脈の位置:左側からの右頭蓋の図)

J0571 (脳を取り除いた後の頭蓋内の大きな脳動脈の位置:頭蓋骨の上方からの図)
解剖学的特徴
起始と走行
- 内頚動脈終末部から分岐し、視交叉上部では前交通動脈を介して左右が吻合します(Yasargil, 1984)。
- 大脳半球間裂に入り、脳梁膝部から脳梁上を後方へと走行します(A2-A5セグメント)(Perlmutter and Rhoton, 1978)。
主要な分枝と灌流領域
- 内側線条体動脈:前有孔質から起始し、尾状核頭部を灌流します(Marinković et al., 2013)。
- 眼窩枝:前頭葉眼窩面に分布します。
- 前頭極動脈:前頭葉極部を灌流します。
- 脳梁辺縁動脈:帯状回と補足運動野を灌流します。
- 脳梁周囲動脈:楔前部と楔部に分布します。
臨床的意義
前大脳動脈の閉塞や梗塞は、以下の症状を引き起こす可能性があります(Gibo et al., 1981):
- 対側下肢の運動麻痺(特に遠位部優位)
- 感覚障害(対側下肢)
- 前頭葉症状(意欲低下、実行機能障害)
- 尿失禁
解剖学的変異は約25%の症例に認められ、以下のようなパターンがあります(Ladziński and Maliszewski, 2005):