滑車上動脈 Arteria supratrochlearis
解剖学的特徴
- 眼動脈の最終分枝であり、眼窩内で内側眼窩壁に沿って前方に進む (Standring, 2020)。
- 眼窩内から前頭切痕または滑車上孔を通り、眼窩上縁内側部を越えて前頭部に出る (Moore et al., 2018)。
- 滑車上筋の上を通過することからその名が付けられている (Drake et al., 2019)。
- 外径は約1.0〜1.5mmと比較的細い血管である (Netter, 2018)。
- 前頭部を上行し、前頭皮膚、頭皮、前頭筋に栄養を供給する (Standring, 2020)。
血管吻合
- 対側の滑車上動脈と豊富に吻合し、前額部の血管網を形成する (Moore et al., 2018)。
- 同側の眼窩上動脈(同じく眼動脈の分枝)と吻合する (Drake et al., 2019)。
- 浅側頭動脈の前頭枝と吻合して、前頭部の側副血行路を形成する (Standring, 2020)。
臨床的意義
- 顔面形成外科や美容外科での前額部皮弁形成時に重要な血管である (Wilkinson, 2021)。
- 前頭部の切開や縫合時に損傷すると、出血が顕著になることがある (Netter, 2018)。
- 眼動脈系と外頸動脈系の吻合点として、頭頸部の血行再建において重要な役割を果たす (Tubbs et al., 2019)。
- 片頭痛の一部では、この血管の拡張が関与していると考えられている (Guyuron et al., 2020)。
発生学的背景
- 発生学的には内頸動脈系に由来し、眼動脈の枝として発達する (Schoenwolf et al., 2021)。
- 胎生期において顔面の発達とともに最終的な走行パターンが確立される (Sadler, 2019)。
変異と個体差