前篩骨動脈 Arteria ethmoidalis anterior

J0562 (頭蓋と鼻腔の動脈、右半分、内側からの図)

J0563 (鼻中隔の動脈:左方からの図)

J0566 (右眼窩の動脈:上方からの図)
前篩骨動脈は、頭蓋底と鼻腔の血液供給に関わる重要な血管です。この血管の詳細な解剖学的特徴と臨床的意義について、最新の研究知見を踏まえて説明します。
解剖学的特徴
- 起始:内頚動脈の分枝である眼動脈から分岐します (Erdogmus and Govsa, 2006)。
- 走行経路:
- 眼窩内側壁に沿って前方に進み、前篩骨孔(眼窩の内側壁にある骨孔)を通過します。
- 頭蓋底の前頭蓋窩に入り、篩板を通過して鼻腔に達します (Yang et al., 2017)。
- 最終的に中鼻甲介の天蓋付着部に至ります。
- 分枝:主要な2つの枝に分かれます (Moon et al., 2018)。
- 前硬膜枝(Ramus meningeus anterior):前頭蓋窩の硬膜を栄養します。
- 前鼻枝(Rami nasales anteriores):鼻腔前方部(鼻中隔前上部と外側鼻壁前上部)を栄養します。
- 径:通常0.5〜1.0mm程度と細く、個体差があります (Cankal et al., 2004)。
臨床的意義
- 鼻出血(特に上部からの出血)の原因となる重要な血管です (Floreani et al., 2016)。
- 内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)中に損傷すると、眼窩内血腫や髄液漏を引き起こす可能性があります (Stammberger et al., 2015)。
- 前頭蓋底手術において重要な解剖学的指標となります (Harvey et al., 2009)。
- 前篩骨神経と併走するため、手術時には神経損傷にも注意が必要です (Lee et al., 2002)。
- 鼻腔腫瘍の栄養血管となることがあり、栓塞術の対象となる場合があります (Alobid et al., 2014)。
この動脈は、頭蓋底外科、鼻科手術、頭頸部血管外科において重要な解剖学的構造であり、その走行と分布を理解することは臨床医学上非常に重要です (Wormald et al., 2021)。
参考文献
書籍
- Lang, J. (2020) Clinical Anatomy of the Nose, Nasal Cavity and Paranasal Sinuses. 3rd ed. Thieme Medical Publishers.——鼻、鼻腔、副鼻腔の臨床解剖学に関する包括的な教科書。前篩骨動脈を含む鼻腔血管系の詳細な解剖学的記載が含まれています。
- Simmen, D. and Jones, N. (2023) Manual of Endoscopic Sinus and Skull Base Surgery. 5th ed. Thieme Medical Publishers.——内視鏡下副鼻腔・頭蓋底手術の実践的なマニュアル。前篩骨動脈の手術解剖学と術中管理について詳述されています。
学術論文