内頚動脈の大脳部 Pars cerebralis arteria carotis internae

右の内頚動脈(前方から見た図)

大脳半球内側面の動脈

小脳、脳幹、視床、線条体の動脈
内頚動脈の大脳部は海綿静脈洞部からくも膜下腔へ移行し、眼動脈・後交通動脈・前脈絡叢動脈などを分岐し最終的に前大脳動脈と中大脳動脈へとつながり、ウィリス動脈輪を構成する。狭窄や塞栓は皮質梗塞を、後交通動脈分岐部は動脈瘤の好発部位であり、臨床症状として片麻痺、失語、眼瞼下垂などが現れる。画像診断(CTA/MRA、DSA)で分岐部と動脈瘤を評価し、治療は血栓回収やステント、コイル塞栓・クリッピングなどが選択される。
概要
- 内頚動脈(arteria carotis interna, ICA)の大脳部(pars cerebralis a. carotis internae)は、海綿静脈洞部〜硬膜輪を越えてくも膜下腔へ移行した後、**眼動脈(a. ophthalmica)・後交通動脈(a. communicans posterior)・前脈絡叢動脈(a. choroidea anterior)などを分岐し、最終的に前大脳動脈(a. cerebri anterior)と中大脳動脈(a. cerebri media)**へと分岐してウィリス動脈輪(circulus arteriosus cerebri)を構成する(Gray, 2020;Rhoton, 2002)。
- 臨床的には、ICA終末部〜M1/A1起始部の狭窄・閉塞・塞栓は皮質梗塞(片麻痺、失語、半側空間無視など)を来し、後交通動脈分岐部は嚢状動脈瘤の好発部位で、動眼神経麻痺やくも膜下出血の原因となる(Greenberg, 2019;Rhoton, 2002)。
解剖(走行と区分)
1) 大脳部の位置づけ(海綿静脈洞部→くも膜下腔)
- ICAは頚部(pars cervicalis)→錐体部(pars petrosa)→海綿静脈洞部(pars cavernosa)を経て、前床突起(processus clinoideus anterior)近傍の近位硬膜輪/遠位硬膜輪(dural rings)を越えると**くも膜下腔(subarachnoid space)**に入り、ここからを実務上「大脳部(supraclinoid / cerebral part)」として扱う(Rhoton, 2002)。
- 大脳部は**視神経(n. opticus)・視交叉(chiasma opticum)・下垂体柄(infundibulum)・前穿通質(substantia perforata anterior)と近接し、周囲にくも膜下槽(視交叉槽・頚動脈槽など)**を形成する(Gray, 2020)。
2) 主要分枝(近位→遠位)
- 眼動脈(a. ophthalmica):硬膜輪直後〜視神経管近傍から分岐し、視神経と伴走して眼窩へ(Gray, 2020)。
- 後交通動脈(a. communicans posterior):後方へ向かい後大脳動脈(a. cerebri posterior, PCA)系と交通。分岐部は動脈瘤の好発(Rhoton, 2002)。
- 前脈絡叢動脈(a. choroidea anterior):側脳室脈絡叢、内包後脚、視索などへ。閉塞で重篤な神経脱落(片麻痺・半盲など)を来しうる(Greenberg, 2019)。
- 終末分岐:前大脳動脈(ACA)と中大脳動脈(MCA)。ACAはA1で前交通動脈(a. communicans anterior)へ、MCAはシルビウス裂へ(Gray, 2020)。
3) 近接する神経・硬膜・骨性ランドマーク
- 動眼神経(n. oculomotorius)は後交通動脈分岐部近傍を走行し、同部の動脈瘤で散瞳を伴う眼瞼下垂が典型(Greenberg, 2019)。
- ICA大脳部は前床突起・視神経管・鞍上部硬膜構造と近く、外科的には前床突起削除や硬膜輪の処理が露出の鍵となる(Rhoton, 2002)。
血行動態・側副血行(ウィリス動脈輪の観点)
- **A1(左右ACA間)とPCom(ICA-PCA間)**は側副血行路として重要で、個体差(低形成・欠損)が虚血パターンや血管内治療戦略に影響する(Osborn, 2017)。