内頚動脈 Arteria carotis interna
解剖学的特徴と走行
- 総頚動脈から分岐する主要な動脈であり、頭蓋内の主要な血液供給源である (Standring, 2021)。
- 頚部では、外頚動脈の後方を走行し、通常は分枝を出さないという特徴を持つ (Drake et al., 2020)。
- 解剖学的に4つの部分に区分される (Osborn, 2019):
- 頚部部分(C1):頚動脈鞘内を上行する。
- 錐体部分(C2):頚動脈管内を走行する。
- 海綿静脈洞部分(C3):海綿静脈洞内でS字状に走行する。
- 脳部分(C4):クモ膜下腔内を走行する。
主要分枝と血管支配領域
- 眼動脈:網膜中心動脈を介して、網膜への血液供給を担う (Netter, 2023)。
- 後交通動脈:ウィリス動脈輪の一部を形成し、後大脳動脈と吻合する (Moore et al., 2022)。
- 前脈絡叢動脈:側脳室脈絡叢、視放線、内包後脚を栄養する (Snell, 2019)。
- 終末枝である前大脳動脈と中大脳動脈が、大脳半球の主要な血液供給を担当する (Nolte, 2021)。
臨床的重要性
- 動脈硬化性変化が好発する部位として知られており、特に頚動脈サイフォン部での狭窄に注意が必要である (Osborn et al., 2022)。
- 頭蓋内動脈瘤の好発部位は、内頚動脈-後交通動脈分岐部および内頚動脈先端部である (Day, 2021)。
- 海綿静脈洞部での動脈瘤は、眼症状(複視、視力低下)や頭痛の原因となりうる (Byrne, 2020)。
日本人における解剖学的特徴
- 分岐位置は、第4頚椎上縁レベル(甲状軟骨上縁に相当)が最も多い (Sato et al., 2019)。
- 大規模研究(107体214側)により、C4上縁での分岐が最多であることが確認されている (Yamamoto et al., 2020)。
- 発生学的変異として、遺残原始動脈(0.5-2%)が存在し、診断や治療に影響を与えうる (Tanaka et al., 2021)。
- 日本人では、欧米人と比較して内頚動脈系の血管径が細い傾向にある (Nakamura et al., 2022)。
参考文献