蝶口蓋動脈の後鼻中隔枝 Rami septales posteriores arteriae sphenopalatinae

J0563 (鼻中隔の動脈:左方からの図)
解剖学的特徴
- 蝶口蓋動脈の終枝として分岐する血管枝であり、蝶口蓋孔を通過した後に鼻中隔方向へ走行する(Standring, 2020)
- 鼻中隔への最も主要な血液供給源であり、特に鼻中隔後部および上部への栄養を担う(Moore et al., 2018)
- 鼻口蓋神経(nasopalatine nerve)に沿って鼻中隔の粘膜下を下降し、切歯管(incisive canal)方向へ向かう(Netter, 2019)
- 鼻中隔の骨面と粘膜の間を走行し、豊富な血管網を形成する(Daudia et al., 2010)
- 前方では前篩骨動脈の分枝である前鼻中隔枝と吻合し、鼻中隔の血管網(Kiesselbach領域を含む)を形成する(Kucik & Clenney, 2005)
走行経路の詳細
- 蝶口蓋孔から鼻腔内に入った後、蝶篩陥凹(sphenoethmoidal recess)の近くで鼻中隔に到達する(Lee & Wormald, 2006)
- 鼻中隔の後上部から前下方へ向かって走行し、鋤骨および篩骨正中板の表面を覆う粘膜に分布する(Standring, 2020)
- 一部の枝は鼻腔底や下鼻道の方向へも分枝を送る(Daudia et al., 2010)
機能的意義
- 鼻腔後部、特に鼻中隔への主要な血液供給を担い、鼻粘膜の生理機能維持に不可欠である(Moore et al., 2018)
- 鼻粘膜の温度調節、湿度調節、免疫機能などの維持に重要な役割を果たす(Elad et al., 2008)
- 豊富な血流により、鼻粘膜の急速な回復と再生を可能にする(Chiu & Vaughan, 2004)
臨床的重要性
- 鼻出血(epistaxis)との関連: 後鼻中隔枝は後鼻出血の最も頻繁な出血源であり、特にWoodruff's plexus(下鼻道後端の血管叢)への血液供給に関与する(Beck et al., 2015; Tunkel et al., 2020)
- 鼻出血の治療: 難治性の後鼻出血に対しては、蝶口蓋動脈の選択的塞栓術や外科的結紮術が行われることがある(Christensen et al., 2005; Soyka et al., 2011)