中硬膜動脈 Arteria meningea media
解剖学的特徴
- 顎動脈の主要な分枝として棘孔を経由して頭蓋内に進入し、硬膜の主要な血管支配を担う (Gray and Standring, 2023)。
- 走行経路:顎動脈から分岐後、外側翼突筋の内側を通過し、棘孔を介して中頭蓋窩に到達する (Netter, 2024)。
- 分布領域:前頭蓋窩および中頭蓋窩の硬膜に広く分布し、特に側頭部の硬膜への血液供給が重要である (Moore et al., 2023)。
- 主要分枝:
- 岩様部枝:側頭骨岩様部の硬膜を栄養する。
- 前頭枝:前頭部の硬膜に分布する。
- 頭頂枝:頭頂部の硬膜を支配する。
臨床的重要性
- 外傷との関連:
- 硬膜外血腫の主要な出血源となる (Greenberg, 2024)。
- 側頭骨骨折による血管損傷のリスクが高い (Winn, 2023)。
- 手術的考慮:
- 頭蓋底手術時の重要な指標血管となる (Rhoton, 2023)。
- 血管塞栓術の対象血管として重要な意義を持つ (Osborn, 2024)。
- 発生学的考慮:
- 中硬膜動脈は原始茎動脈の残存として発達する (Padget, 1948)。
- 発生過程での血管走行パターンの変異は成人での解剖学的変異の原因となる (Toma, 2016)。
解剖学的変異
- 走行パターン:個体差が大きく、手術時には特別な注意を要する (Lang, 2023)。
- 副中硬膜動脈の存在:70%以上の症例で認められ、臨床的に重要である (Drake et al., 2024)。
- 眼動脈との吻合:前頭枝を介して重要な側副血行路を形成する (Tubbs et al., 2023)。
- 硬膜内経路:まれに硬膜内を走行する変異が報告されている (Alvernia et al., 2010)。
画像診断の特徴
- 血管造影:外頚動脈造影で明瞭に描出され、頭蓋内での分枝パターンが評価できる (Lasjaunias and Berenstein, 2001)。
- CT血管造影:骨との関係性を評価する上で有用である (Osborn, 2024)。
- MR血管造影:非侵襲的に血管走行を評価できる (Kornienko and Pronin, 2009)。