中側頭動脈 Arteria temporalis media
解剖学的特徴
- 浅側頭動脈の前側枝から分岐する重要な側枝である (Standring, 2020)。
- 頬骨弓の直上付近で側頭筋膜を穿通し深部へ向かう (Moore et al., 2018)。
- 側頭骨鱗部表面に形成される中側頭動脈溝に沿って上行する。
- 直径は約1.0〜1.5mmで、長さは個人差があるが約3〜5cm程度である (Yang et al., 2015)。
発生学的特徴
- 胎生期の第一鰓弓動脈由来の外頸動脈系統に属する (Sadler, 2019)。
- 浅側頭動脈とともに発生し、頭部外側の筋組織への血流確保に寄与する。
機能と分布
- 側頭筋膜への血液供給を行い、側頭部の皮膚および皮下組織の栄養を担う (Drake et al., 2019)。
- 側頭筋(咀嚼筋群の一つ)への主要な栄養血管として機能する。
- 顎動脈の深側頭枝と吻合を形成し、側頭部の側副血行路を構成する (Netter, 2018)。
- 頭皮の栄養血管としても機能し、頭部外傷時の出血源となりうる。
解剖学的指標と変異
- 側頭骨外側面の中側頭動脈溝は解剖学的標識点として重要である (Tubbs et al., 2016)。
- 約10%の症例で浅側頭動脈の後枝から分岐する変異が報告されている (Pinar et al., 2017)。
- まれに複数の分枝として存在する場合がある(約5%)(Lee et al., 2014)。
臨床的意義
- 側頭部の外科的アプローチ(側頭開頭術など)の際に損傷リスクがある (Abdelwahab et al., 2021)。