浅側頭動脈の前耳介枝 Rami auriculares anteriores arteriae temporalis superficialis

J0559 (顔面表層の動脈:右側からの図)
解剖学的特徴
- 浅側頭動脈の前耳介枝は、浅側頭動脈から分岐する複数の小動脈枝の総称である (Standring, 2020)
- 耳珠の前方、耳介の前面、および外耳道の前壁に沿って走行する (Moore et al., 2018)
- 通常2〜4本の細い枝として耳介軟骨の前面に分布し、耳介前面の皮膚および皮下組織に血液を供給する (Platzer, 2013)
- 耳介筋(前耳介筋、上耳介筋)への栄養血管としても機能する (Lippert, 2017)
- 外耳道の前壁および外側部の皮膚にも細枝を送る (Standring, 2020)
血管吻合と側副血行路
- 後耳介動脈の枝と耳介の後縁付近で吻合し、耳介周囲の血管網を形成する (Moore et al., 2018)
- 顔面動脈の枝とも小規模な吻合を形成することがある (Platzer, 2013)
- これらの吻合により、耳介領域の豊富な側副血行路が確保されている (Lippert, 2017)
臨床的意義
- 外科手術における重要性: 耳介前部の皮弁作成や外耳道手術の際に、この血管枝の温存が重要となる (Park et al., 2019)
- 出血のリスク: 耳介前部の外傷や切開時に出血源となりうるため、止血操作の際に注意が必要である (Standring, 2020)
- 美容外科: 耳介形成術や耳垂修正術において、血流の維持のために前耳介枝の走行を考慮する必要がある (Janis et al., 2011)
- 側頭動脈炎: 巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)では、浅側頭動脈本幹とともにこの分枝も炎症の影響を受けることがある (Salvarani et al., 2002)
- 皮弁の生存性: 耳介周囲の皮弁や組織移植の際、前耳介枝からの血流が皮弁の生存性に寄与する (Park et al., 2019)
画像診断