後頭動脈 Arteria occipitalis
解剖学的位置と走行
- 後頭動脈は、通常、外頚動脈の後壁から分岐し、頭蓋底に向かって上行する重要な動脈である (Standring, 2023)。
- 顎二腹筋後腹と茎突舌骨筋の間を通過し、乳様突起と後頭骨の間の溝(後頭動脈溝)を経由する (Drake et al., 2024)。
- その後、頭板状筋と僧帽筋の間を通って後頭部に達し、後頭皮膚に終枝を送る。
主要分枝と支配領域
- 乳突枝:乳突孔を通って中耳腔に入り、乳突蜂巣の粘膜を栄養する (Moore et al., 2022)。
- 下行枝:胸鎖乳突筋、僧帽筋、頭半棘筋など、頚部後面の筋群を養う。
- 髄膜枝:頭蓋内に入り、後頭蓋窩の硬膜を栄養する。
- 後頭枝:後頭部の皮膚および帽状腱膜を栄養し、反対側の枝と吻合する。
臨床的意義
- 本動脈は、後頭部の血管性頭痛の原因血管となることがあり、圧痛点の一つとして重要である (Netter, 2023)。
- 頭蓋底手術や頚部郭清術において、特に損傷に注意を要する重要な血管である (Tubbs et al., 2023)。
解剖学的変異
- 起始部の変異:外頚動脈直接分岐(57.7%)、上行咽頭動脈分岐(31.2%)、後耳介動脈との共同幹(9.1%)、内頚動脈分岐(0.3%)がある (児玉, 2000)。
- 走行の変異:頭最長筋内側走行(標準型、80.7%)、外側走行(変異型、17.9%)が認められる。
- これらの変異は、手術時のランドマークとして重要であり、術前の詳細な評価が必要である。
参考文献
- Drake, R.L., Vogl, W. & Mitchell, A.W.M. (2024) Gray's Anatomy for Students, 5th ed. Philadelphia: Elsevier.
- Moore, K.L., Dalley, A.F. & Agur, A.M.R. (2022) Clinically Oriented Anatomy, 9th ed. Philadelphia: Wolters Kluwer.