上行口蓋動脈 Arteria palatina ascendens

J0558 (喉頭と舌の動脈:右側からの図)

J0564 (頚深部の動脈、右方からの図)
基本的特徴
- 咽頭の側壁を垂直に上行し、口蓋帆、扁桃茎状突起の筋群、および耳管に分布する重要な動脈である (Standring, 2021)。
- 口蓋舌弓、口蓋咽頭弓、軟口蓋、および口蓋扁桃に分布し、周囲の動脈(下行口蓋動脈、咽頭上行枝など)と吻合を形成する (Moore et al., 2018)。
解剖学的特徴
- 起始は主に顔面動脈から(73.1%)、次いで外頚動脈から(23.5%)分岐し、個体差が大きい (Lam et al., 2013)。
- 茎突舌筋と茎突咽頭筋の間を走行する解剖学的位置関係が特徴的で、これらの筋肉に栄養分枝を供給する (Drake et al., 2020)。
- 直径は約1.0〜1.5mmで、長さは約3〜4cmの細い動脈である (Pandey and Naik, 2017)。
終末分布と臨床的意義
- 内側翼突筋と上咽頭収縮筋上部に分枝を供給し、咀嚼機能と嚥下機能に関与する (Netter, 2019)。
- 最終的に二分岐し、口蓋帆挙筋と軟口蓋の前部および後部に分布して軟口蓋の機能を支える (Sinnatamby, 2016)。
- 扁桃切除術や軟口蓋形成術などの口腔咽頭手術において、出血リスクのある重要な血管である (Snell, 2018)。
発生学と変異
- 第3鰓弓動脈由来の血管で、発生過程で顔面動脈または外頚動脈との連結が決定される (Sadler, 2019)。
- 稀に欠損または重複例が報告されており、その場合は咽頭上行枝や顔面動脈の他の分枝が代償性に発達する (Kim et al., 2010)。
参考文献
書籍
- Drake, R.L., Vogl, A.W. and Mitchell, A.W.M. (2020) Gray's Anatomy for Students. 4th ed. Philadelphia: Elsevier.——医学生向けの解剖学教科書として広く使用されており、上行口蓋動脈の走行経路と筋群への分枝について詳細に記載されている。
- Moore, K.L., Dalley, A.F. and Agur, A.M.R. (2018) Clinically Oriented Anatomy. 8th ed. Philadelphia: Wolters Kluwer.——臨床的観点から解剖学を解説した標準的教科書で、上行口蓋動脈の分布領域と周囲動脈との吻合について記述されている。