上行咽頭動脈 Arteria pharyngea ascendens

J0558 (喉頭と舌の動脈:右側からの図)

J0564 (頚深部の動脈、右方からの図)

J0565 (右側の内頚動脈と鼓室)

J0570 (脳を取り除いた後の頭蓋内の大きな脳動脈の位置:左側からの右頭蓋の図)
解剖学的特徴
- 外頚動脈の最初の内側枝として分岐し、細長い走行を示す。頭蓋底に向かって咽頭側壁を垂直に上行する (Smoker and Eisenberg, 2016)。
- 頚動脈鞘の内側、迷走神経と舌咽神経の間を走行し、茎突舌骨筋の内側を通過する (Berkovitz and Moxham, 2022)。
- 深頚筋群(頭長筋、前頭直筋)の前面に位置し、頭蓋底の頚静脈孔付近まで到達する (Osborn, 2019)。
主要分枝と分布領域
- 咽頭枝(Rami pharyngei):咽頭収縮筋群への主要な血液供給源となり、咽頭壁の粘膜下層で豊富な血管網を形成 (Berkovitz and Moxham, 2022)。
- 髄膜枝(Rami meningei):頚静脈孔を通過して後頭蓋窩の硬膜に分布し、椎骨動脈の髄膜枝と吻合 (Lang and Wachsmuth, 2021)。
- 下鼓室動脈(A. tympanica inferior):鼓室小管を経由して中耳腔に入り、鼓室粘膜や耳小骨への栄養を供給 (Moore et al., 2023)。
- 耳管枝(Rami tubarii):耳管軟骨部の粘膜と周囲組織を栄養。中耳炎の病態に重要 (Moore et al., 2023)。
臨床的意義
- 頭蓋底手術における重要な指標血管であり、損傷すると止血が困難 (Lang and Wachsmuth, 2021)。
- 咽頭癌の栄養血管となることがあり、選択的動脈塞栓術の標的となりうる (Toma et al., 2020)。
- 脳底部への側副血行路として機能し、内頚動脈閉塞時の代償経路となる可能性がある (Osborn, 2019)。
解剖学的変異
- 起始部のバリエーション:外頚動脈直接分岐(57.4%)が最多で、後頭動脈との共同幹(33.1%)が続く (Toma et al., 2020)。
- 内頚動脈からの分岐(5.4%)や頚動脈分岐部からの起始(3.3%)は稀少変異として重要 (Toma et al., 2020)。
- 重複例の報告があり、血管造影や手術時の留意点となる (Toma et al., 2020)。
発生学的考察