右冠状動脈 Arteria coronaria dextra

J0547 (大動脈弁を広げた図)

J0549 (心臓の動脈、正面上方からの図)

J0550 (心臓の動脈、背尾図)

J0552 (心臓の静脈:腹頭方からの図)

J0556 (大動脈弓とその枝:左前方からの図)
右冠状動脈は、心臓の冠状動脈系における主要な血管の一つであり、詳細な解剖学的特徴と臨床的意義を持っています(Netter, 2019; Gray, 2020)。
解剖学的特徴
- **起始部:**大動脈の起始部(右冠状洞または大動脈洞)から分岐し、通常は大動脈弁の右冠尖の上方に位置します(Moore et al., 2018)。
- **走行経路:**最初に肺動脈と右心耳の間を通過し、右房室溝(冠状溝)に達します(Standring, 2021)。冠状溝内では右回りに進行し、鈍縁を経て心臓の後面(後室間溝)まで走行します(Drake et al., 2019)。
- 主要分枝:
- 洞房結節枝(60〜80%の例で右冠状動脈から分岐):洞房結節に血液を供給(James, 2015)
- 右辺縁枝:右心室の前面に分布(Kugel, 1927)
- 右室前枝:右心室の前壁に分布(Hansen, 2017)
- 房室結節枝(80〜90%の例で右冠状動脈から分岐):房室結節への主要血液供給(Netter, 2019)
- 後室間枝(後下行枝):後室間溝を心尖に向かって下降し、心室中隔後部と両心室の後壁に分布(Standring, 2021)
- **分布領域:**右心房、右心室、左心室後壁および下壁、心室中隔の後3分の1、洞房結節(約60%)、房室結節(約80%)に血液を供給します(Moore et al., 2018)。
臨床的意義
- **冠状動脈優位性:**約70%の人では右冠状動脈が優位(右優位型)で、後室間枝が右冠状動脈から分岐します。20%は左優位型、10%は均衡型です(Fuster et al., 2017)。
- **梗塞部位:**右冠状動脈の閉塞は通常、下壁心筋梗塞を引き起こします。また、房室結節への血流が遮断されると、房室ブロックが生じることがあります(Libby et al., 2019)。
- **不整脈:**洞房結節枝の閉塞は洞機能不全を引き起こす可能性があります(Zipes et al., 2018)。
- **冠動脈バイパス術(CABG):**右冠状動脈への血行再建は、狭窄または閉塞した血管を迂回するために行われます(Sabiston and Townsend, 2022)。
- **変異:**起始部や走行経路の解剖学的変異は、約1〜2%の人口に存在し、一部の変異は突然死のリスク因子となる可能性があります(Angelini et al., 2014)。
右冠状動脈は、心臓の電気伝導系や心筋への血液供給において重要な役割を果たしており、その閉塞や狭窄は重大な心臓疾患につながる可能性があります。冠動脈造影検査は、この血管の評価における重要な診断ツールです(Baim and Grossman, 2018)。
参考文献
書籍
- Baim, D.S. and Grossman, W. (2018) Grossman's Cardiac Catheterization, Angiography, and Intervention. 8th edn. Philadelphia: Lippincott Williams & Wilkins. ——心臓カテーテル検査、血管造影、および介入治療に関する包括的な教科書で、冠動脈造影検査の標準的な手法と解釈を詳述しています。
- Drake, R.L., Vogl, A.W. and Mitchell, A.W.M. (2019) Gray's Anatomy for Students. 4th edn. Philadelphia: Elsevier. ——医学生向けの解剖学教科書で、心臓血管系の解剖学的構造を臨床的視点から解説しています。
- Fuster, V., Harrington, R.A. and Narula, J. (2017) Hurst's The Heart. 14th edn. New York: McGraw-Hill Education. ——心臓病学の標準的な教科書で、冠状動脈の解剖学的変異と臨床的意義について詳細に記載されています。