右肺動脈 Arteria pulmonalis dextra

解剖学的特徴

右肺動脈は、肺動脈幹から分岐する2本の主要な枝のうち長い方で、解剖学的に重要な位置を占めています(Drake et al., 2020)。大動脈弓の下を通過し、縦隔上部で正中線を横切って右側に向かい、右主気管支の上方を走行します。右肺門では、気管支動脈や肺静脈、リンパ管などと共に肺根を形成します。

血管構造と周囲関係

血管壁は弾性型動脈で、低酸素血を運搬する機能に適応した構造を持ちます(Standring, 2021)。その走行中、重要な周囲構造物(上大静脈、奇静脈、迷走神経)と近接関係にあり、臨床的に注意を要します。

分岐パターン

分岐パターンは以下の通りですが、外科手術や画像診断において重要な解剖学的変異が存在することに留意が必要です(Moore et al., 2023):

  1. 上葉動脈(truncus superior):
  2. 中葉動脈(truncus medius):
  3. 下葉動脈(truncus inferior):

臨床的意義

臨床的には、肺塞栓症、肺高血圧症、先天性心疾患などの診断・治療において、この血管の詳細な解剖学的理解が不可欠です(Netter, 2022)。また、胸部手術時には血管走行の変異に注意を払う必要があります。

参考文献

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J0531 (心臓:拡張時、横隔膜面の背尾図)

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J0548 (大きな心臓血管の位置:腹面図)

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J0550 (心臓の動脈、背尾図)

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J0551 (心臓の静脈:背尾図)

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J0685 (食道と気管とその周囲:前方からの図)

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J0749 (右肺:内側からの図)

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J0758 (右の胸腔と縦隔、肺および胸膜の除去:右側からの図)