左脚(房室束の)Crus sinistrum fasciculi atrioventricularis

J0537 (左心室における房室束とその分岐)
解剖学的構造
左脚(左束枝)は、房室束(ヒス束)から分岐する刺激伝導系の主要な構成要素です(Anderson et al., 2009)。以下の解剖学的特徴を有しています:
- 房室束から心室中隔の左側面で分岐し、扁平な帯状の構造を呈します(Tawara, 1906)
- 心室中隔の心内膜下を左心室方向へ走行します
- 通常、前枝(左脚前枝)と後枝(左脚後枝)の2つの主要な分枝に分かれます(Rosenbaum et al., 1970)
- 左脚前枝:より細く、前上方へ走行し、左心室前壁および前側壁を支配します
- 左脚後枝:より太く短く、後下方へ走行し、左心室後壁および下壁を支配します
- 一部の症例では、中隔枝として独立した第3の分枝が認められることがあります(Demoulin and Kulbertus, 1972)
- 左脚の分枝は、プルキンエ線維網となって左心室の心筋層全体に広がります
- 左脚は右脚と比較して、より広範囲に分布し、構造的に複雑です(Anderson et al., 2009)
組織学的特徴
左脚を構成する細胞は、以下のような特徴を持っています(Saffitz et al., 2009):
- 特殊心筋細胞で構成され、通常の心筋細胞よりも大きく、グリコーゲンに富みます
- 介在板が少なく、迅速な刺激伝導を可能にしています
- 伝導速度は約2〜4m/秒と非常に速いです(Kleber and Rudy, 2004)
生理学的機能
左脚は心臓の電気的刺激伝導において極めて重要な役割を果たします(Josephson, 2008):
- 房室結節からヒス束を通じて伝達された電気的興奮を、左心室全体に迅速かつ効率的に伝達します
- 左心室の同期的な収縮を可能にし、効率的な血液拍出を実現します