左半月弁(大動脈弁の)Valvula semilunaris sinistra (Valva aortae)

J0540 (収縮した心室:心房を除去した後の基盤、弁が閉じている図)

J0541 (拡張期の心臓:おおよそ横隔面に平行な図)

J0547 (大動脈弁を広げた図)
解剖学的構造
左半月弁は、心臓の大動脈弁を構成する3つの弁尖(半月弁)の1つです(Gray, 2020; Netter, 2018)。大動脈弁は左心室と上行大動脈の接合部に位置し、左半月弁は以下の解剖学的特徴を持ちます:
- 大動脈弁輪の左側に位置し、左冠動脈の起始部に近接している(Anderson et al., 2000)
- 半月型(三日月型)の形状を呈し、弁尖の自由縁は大動脈側に向かって凸状を示す
- 弁尖の中央部には結節(アランチウス結節)があり、弁の閉鎖を助ける(Sutton et al., 1995)
- 弁尖の基部は大動脈壁に付着し、弁尖間の空間はバルサルバ洞(大動脈洞)を形成する
- 左冠尖とも呼ばれ、この名称は左冠動脈が対応する大動脈洞から起始することに由来する
左半月弁は、右半月弁(右冠尖)および後半月弁(無冠尖)と共に大動脈弁を構成します(Netter, 2018)。3つの弁尖は対称的に配置され、正常な弁機能を維持するために協調して働きます。
生理学的機能
左半月弁の主要な機能は、心周期における血液の一方向性の流れを確保することです(Guyton and Hall, 2020):
- **収縮期:**左心室の収縮時、血液の圧力により弁尖が大動脈側に押し開かれ、血液が左心室から大動脈へ駆出される
- **拡張期:**左心室の弛緩時、大動脈内の血液が重力と圧較差により逆流しようとするが、3つの弁尖が中央で接合して閉鎖し、血液の逆流を防ぐ
弁の開閉は受動的な機構であり、圧較差によって調節されます(Berne and Levy, 2018)。正常な大動脈弁は、心拍出量の維持と心筋への過度の負荷を防ぐために、十分な開口面積と完全な閉鎖を提供します。
臨床的意義
左半月弁を含む大動脈弁の病変は、重要な臨床的問題を引き起こします(Otto and Bonow, 2020):
- **大動脈弁狭窄症:**弁尖の石灰化、線維化、または先天性の二尖弁などにより弁の開口が制限され、左心室から大動脈への血流が障害される(Nkomo et al., 2006)。進行すると左心室肥大、心不全、失神、狭心症などを引き起こす
- **大動脈弁閉鎖不全症:**弁尖の変性、感染性心内膜炎、大動脈拡張などにより弁の閉鎖が不完全となり、拡張期に血液が大動脈から左心室へ逆流する(Enriquez-Sarano et al., 2009)。慢性的な容量負荷により左心室拡大と心不全を引き起こす
- **感染性心内膜炎:**細菌感染により弁尖に疣腫が形成され、弁破壊や穿孔を引き起こすことがある(Habib et al., 2015)