大動脈口 Ostium aortae
大動脈口は、左心室から大動脈への移行部に位置する重要な解剖学的構造です(Anderson et al., 2000)。
解剖学的特徴
位置と構造:
- 大動脈口は左心室の上部、心底部に位置し、右後方に僧帽弁口、右前方に肺動脈口が隣接しています(Standring, 2016)。
- 開口部の直径は成人で約2.5〜3.0cmです(Netter, 2018)。
- この開口部には大動脈弁(半月弁)が位置し、3枚の半月状の弁尖(右冠尖、左冠尖、無冠尖)から構成されています(Anderson et al., 2000)。
大動脈弁の構造:
- 各弁尖は線維性結合組織から成り、弁尖の自由縁には弁結節(Nodulus Arantii)があります(Yacoub & Takkenberg, 2005)。
- 弁尖の基部には大動脈洞(Valsalva洞)と呼ばれる膨隆部があり、右冠動脈洞と左冠動脈洞からそれぞれ冠動脈が起始します(Anderson et al., 2000)。
- 弁輪(annulus)は線維性の支持構造で、心臓の線維骨格の一部を形成しています(Standring, 2016)。
機能
血行動態における役割:
- 左心室の収縮期(駆出期)には、大動脈弁が開放し、酸素化された血液が全身循環へ送り出されます(小川ら, 2020)。
- 左心室の拡張期には、大動脈弁が閉鎖し、大動脈から左心室への血液の逆流を防ぎます(Otto & Bonow, 2021)。
- 弁の開閉は左心室と大動脈の圧較差によって受動的に制御されます(小川ら, 2020)。
心音との関連:
- 大動脈弁の閉鎖は第2心音(II音)の大動脈成分(A2)を形成します(Otto & Bonow, 2021)。
臨床的意義
大動脈弁狭窄症(Aortic stenosis, AS):