動脈円錐(右心室の漏斗)

動脈円錐は、肺動脈管に開口する前の位置にある漏斗形の流出路で、滑らかな壁を持っています。これは発生学的には心球に相当します。

日本人のからだ(村上弦 2000)によると

漏斗部(円錐ないし流出路)の形態変異(図20,表3, 4)

動脈円錐は、肺動脈管に開口する前の位置にあり、漏斗形の流出路で滑らかな壁を有しています。これは発生学的には心球に相当します。

心室上部の動脈円錐(いわゆる漏斗部または流出路)の位置や存在を検討することは、心室と大血管の位置関係を解釈する大きな手がかりとなります。具体例として、完全大血管転位症の94%を占める典型例では、右室から大動脈が起始し、大動脈弁下方にはよく発達した漏斗部(大動脈円錐)が存在します。肺動脈は左室から起始します。残りの6%では、(左室起始の)肺動脈弁下方にわずかながら漏斗部(円錐)が存在します。さらに、80%では大動脈弁が肺動脈弁の右前上方に、20%では前上方または左前上方に位置しています(高尾,1997)。

解剖学的修正大血管転位症(日本で10例以上の報告あり)では、心臓と血管のつながりは正常でありながら、大動脈が肺動脈の左前方に位置し、大動脈弁下方には漏斗部(大動脈円錐)が存在します。冠動脈は大動脈前面から1本だけ起始し、左回旋枝、前下行枝、後下行枝、辺縁枝に分岐します(高尾,1997)。

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図20 漏斗部(円錐ないし流出路)の形態変異の諸型

図20 漏斗部(円錐ないし流出路)の形態変異の諸型

A: 肺動脈円錐型(正常)、B: 大動脈円錐型、C: 両側円錐型、D: 円錐欠如。黒塗り部分は漏斗部(円錐)の範囲を示しています。大動脈と肺動脈の位置関係は、漏斗部(円錐)の形状に応じて変化します。円錐が欠如している例(D)でも、若干の円錐形状が見られることが多いです。

(高尾, 1989)

表3 心室大血管異常にみられる円錐の型と頻度(%)

表3 心室大血管異常にみられる円錐の型と頻度(%)

正常円錐 d型大血管転位(正位心) l型大血管転位(鏡像位) 両大血管右室起始 両大血管左室起始 解剖学的修正
A.肺動脈円錐型(正常) 100 1 0 17 48 0
B.大動脈円錐型 0 95 82 4 27 33
C.両側円錐型 0 3 18 77 1 67
D.円錐欠如 0 1 0 2 12 0

表3のA-Dは,図20のA-Dに対応する.